箱根駅伝 駒澤大・藤田敦史監督が誓った「復路優勝」の決意と来季への布石
【箱根王座奪還のカギは――】 目標を復路優勝に切り替えて迎えた翌日、6区の伊藤は区間2位で走りながらも青学大には4分07秒差まで開けられたが、7区の佐藤は従来の区間記録を57秒も上回る大幅更新劇を展開し、青山学院大を1分40秒差まで詰めた。8区以降は、青学大との差は再び開き始めたが、安原海晴、村上響、小山翔也の2年生3人はそれぞれ区間4位、5位、2位の走りで秒差の遅れに止め、復路新記録の5時間20分50秒でゴール。総合では3分48秒差で敗れたとはいえ、復路優勝で一矢報いた。 「圭汰を入れたのだから復路だけは絶対に獲るぞ、と選手たちにも言いましたけど、それができたことが、今回は一番大きいですね。結果を残せたというより、そういう戦略で圭汰を7区に配置して、その思惑どおりの走りを選手たちがしてくれたことは、成長の証だと思います。 復路優勝をしようと思っても、なかなか実行に移すのは難しい。いくらゲームチェンジャーを置いても、それが機能しなかったり、機能しても次の区間がうまくいかないことは、よくあることなので。 でも最後は、私が思い描いていたとおりに、青学大を芦ノ湖から詰めてゴールした。この事実がうちにとっては非常に大きなことだと思います」 箱根初経験だった2年生たちが、重圧があるなかできっちり役割を果たしたのは大きい。 「10区はギリギリまで迷っていて、本当はエントリーした吉本真啓(4年)も考えていました。でも小山の状態がすごくよかったので優先しました。吉本も最後は泣いていたのでかわいそうだったけど、今季は選手層が厚くないなか、最後には『誰を落とすか』というところまで持ってこられた。そこまでになったからこそ、最後はある程度、爪跡を残せたかなと思います」(藤田監督) 往路の1年生2人を含めた新顔の5選手にしっかり箱根を経験させ、来季は今回の出走メンバーでは篠原以外の9人が残る状況。藤田監督は「前回とは違う2位なので、間違いなく来年の箱根につながる戦いはできたと思います」と言う。 一方で、課題も見えてきた。 山川は今回の走りを、悔しさを交えて次のように振り返った。 「年間を通した準備が不足していたことを一番感じていますが、走りがストライド型になってきているので、ピッチで上れなくなっていました。回転数が落ちてきてしまうと本当にそのまま落ちてしまう感じで、軽い脱水症状にもなって腕がつってしまったので......」 藤田監督はレース後の山川とのやり取りについて、創価大の5区候補だった吉田響(4年)が2区に回って快走したことを例に挙げながら、話してくれた。 「山川も2区にいかせたほうが生きるかなと思って、終わってから本人に話したら、『来年は2区でいきます』と言ってきたんです。『お前、5区は?』と聞くと、『もう僕はいいです。ほかの選手がいるんで』と言ってきた。『じゃ、責任を持ってほかの下級生を育てろよ』と伝えました」 駒大の箱根王座奪還への必須条件は、山区間の育成となりそうだ。
折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi