「若い選手に出場機会を与えることを怖がってはいけない」U-17世界王者ドイツが苦しむ“仕上げの育成”
成績不振で昨年9月にドイツ代表ハンジ・フリック監督が解任。世代交代の真っ只中にあるA代表は、試行錯誤の日々を過ごしている。一方で、U-17ドイツ代表がFIFA U-17ワールドカップで初優勝を果たすなど、育成年代では再び結果が出始めている。それでも、将来を嘱望される若手選手がなかなかA代表で活躍できないという問題を抱えているドイツサッカー界。国内でも「仕上げの育成がうまくいっていない」との声が上がっている中、現在何が必要と分析されているのだろう? この課題は、経験の浅い若手選手の起用に厳しい視線を送ることも多い日本においても真剣に向き合わなければならないテーマではないだろうか。 (文=中野吉之伴、写真=AP/アフロ)
「ドイツから学ぶものはもうない」そんな声も聞こえてきた
2023年11月にインドネシアで開催されたFIFA U-17ワールドカップ。日本も参加したこの大会で見事優勝を果たしたのがドイツだった。 苦難続きのA代表とは対照的だ。2022年FIFAワールドカップ・カタール大会では日本に敗れるなど2018年ロシア大会に続きグループリーグで敗退。雪辱を期していたはずの2023年9月の日本代表との親善試合でも、逆にいいところがないまま一蹴されたのは記憶に新しい。ハンジ・フリック監督は解任され、ユリアン・ナーゲルスマンが新監督として指揮を取っているが、まだまだ復調とはいえないのが現状だろう。 「ドイツは終わった」 「ドイツから学ぶものはもうない」 そんな声もいろんなところから聞こえてきていた。ドイツ国内にも自暴自棄なことを口にする人はいた。ドイツサッカー連盟(DFB)による育成や指導者への取り組みに懐疑的な視線を向ける人たちもいた。それでも、U-17代表がUEFA U-17欧州選手権を制し、欧州王者として挑んだU-17ワールドカップでの戦いぶりと大会初優勝という結果を受けて、少し落ち着いて現状を分析することができるようになってきている。 選手個々の資質、チームとしての戦術整理が問われるのは間違いないが、それだけではなく、チームビルディングの浸透度、そして選手の成長のための環境づくりについてはこのU-17年代の大会を通して大いに考えさせられるものがあった。