「若い選手に出場機会を与えることを怖がってはいけない」U-17世界王者ドイツが苦しむ“仕上げの育成”
「仕上げの育成」がうまくいっていない実情
彼らの話を聞いて、改めてチームとしての取り組みの大切さを感じさせられた。代表チームは選抜チーム。世代が上がれば上がるほど、一緒に過ごせる時間は少なくなる。A代表ともなれば、シーズン中は代表週間でも練習よりもコンディション調整に時間が取られる。 それでも、「時間がないこと」を言い訳にしてはならない。時間がない中でどのようにチームビルディングをしていくか、そしてA代表になるまでにどのように世代別代表で取り組んでいくべきかは大きなテーマとなるのだろう。 U-17代表が世界王者に輝いたから、これでドイツの将来は安泰だとは誰も思っていない。現状を丁寧に分析し、成果と課題を適切に把握して、それを次へとつなげていかなければならない。 U-17代表監督クリスチャン・ヴュックは歓迎セレモニー後に行われたインタビューで、「U-17ワールドカップ優勝はプロセス」と話し、そして次のようにメッセージを残している。 「この次のステップは、選手みんながそれぞれで成し得なければならないものだ。それはクラブでプロデビューを飾り、ポジションをつかんでいくこと。そして所属クラブは彼らにどんな道があるのかを示し、出場機会を与えなければならない。可能な限りトップレベルの環境を、だ。これこそがドイツサッカー界における最大の問題の一つ。将来有望なタレントは十分なほどいる。だが、ユース後の『仕上げの育成』時期に適切なレベルで、適切な出場機会がない。現在1部で出場機会を得ている選手がどれだけいるか。2部でもいない。3部でもほとんどいないのが現状だ」 同じような指摘は元U-21ドイツ代表監督シュテファン・クンツもしていた。ドイツはUEFA U-21欧州選手権において、2017年大会優勝、2019年大会準優勝、2021年大会優勝という結果を出している。だが、そこからA代表に昇格した選手は多くはない。 クラブにも言い分はあるだろう。「若手選手を起用しようとはしている。だが、ピッチ上でチームを勝利に導くだけのパフォーマンスを出せないと起用するのは難しい」という判断がされがちだ。それも理解はできる。 だが、ヴュックはそれを「甘え」と切り捨てる。 「難しいと口にするが、イングランド、フランス、スペインではそうした若手選手が1部や2部でどんどん出場機会を得ているではないか。バルセロナではU-17世代の選手がラ・リーガに出場している。なのに、なぜドイツだけができない? これは恥ずべきことではないか」