「延命治療」望まない患者に“高度な救急医療”の矛盾 日本救急医学会などが高齢者救急のあり方に提言
結果として本人が望まない最期を迎える
提言は、市民、高齢者医療・ケアスタッフ、病院、消防職員、厚労省など関係する8者に宛てるかたちでまとめられた。 このうち「市民」への提言では、「どのような生き方を望むか、どのような医療やケアを受けたいか」などを日頃から家族やかかりつけ医と繰り返し話し合っておくよう求めた。 たとえば、本人が「DNAR」の意思を持っているにもかかわらず、急変した場合に家族らがあわてて救急車を呼んでしまうことが少なくない。こうした時に、救急隊による心臓マッサージ(胸骨圧迫)の結果、骨折や出血した上に蘇生できない場合もあり、「結果としてご本人の望まない最期を迎えることがある」という。 こうしたことから、普段から緊急時の連絡先を確認し合い、また、急変時などには「#7119」(救急相談ダイヤル)や「Q助」(救急受診WEBアプリ)を活用することをすすめている。 また、「急性期~慢性期病院」に宛てた提言では、もっとも大切なこととして、「患者さんご本人の意思の尊重」を挙げ、「患者さんが今後どのような人生を望むのか」を(医療現場の)多職種で確認・支援することを求めた。 さらに、「消防職員」に対しては、「傷病者の『DNAR』が判明した際の体制整備」を要望。現場に駆け付けても、傷病者の意思に沿って、かかりつけ医の指示の下に、「救急隊が心肺蘇生を中止できる、あるいは不搬送が可能となる」体制を整えることを求めた。
「決して救急医療を差し控えるためではない」
会見では、提言にあたり、日本救急医学会をはじめとする14学会、さらに日本弁護士連合会なども加わった19団体による「高齢者救急問題を検討する懇話会」で問題点などが話し合われてきたことなど、これまでの経緯や現状、対策が語られた。 会見に出席した日本救急医学会の大友康裕代表理事は、「(高齢者救急は)増加の一途をたどり、救急医療におけるウエイトも年々増しているが、高齢者救急には複雑な事情がある。適切な診療を行うよう努力したつもりであっても、結果的に患者さんや家族から『望んでいた治療と違う』『こういうことはしてほしくなかった』とお叱りを受けることも多々ある」と語った。 懇話会の委員長を務めた同学会高齢者救急委員会前委員長の真弓俊彦氏は、「提言は、決して高齢者の方への救急医療を差し控えるためのものではない。軽症、中等度(症状)の方の救急搬送は非常に増えているが、それを抑制しようというためのものでもない。高齢者の方が満足して(人生の)最期を迎えられるような世の中にしていきたい、という願いを込めた」と述べた。