芸人・大瀬うたじさん逝去 「脳幹出血」の原因・なりやすい人の特徴を医師が解説
芸人の大瀬うたじさんが「脳幹出血」のため、7月6日(土)に亡くなったことを、所属する漫才協会の公式サイトが発表しました。76歳でした。かつては「大瀬ゆめじ・うたじ」のコンビを組んでいましたが、解散後はいわゆる「ピン芸人」として活動していました。大瀬さんの訃報に接し、脳幹出血の症状・原因・発症しやすい人の特徴・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。 【イラスト解説】「脳卒中」の前兆・5つの初期症状 ※この記事はMedical DOCにて【「脳幹出血の症状」はご存知ですか?原因・なりやすい人の特徴も医師が解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
「脳幹出血」とは?
脳幹とは、脳の深部にあり意識や呼吸などの生きるために必要な機能を担う部位です。頭部画像検査では、おおよそ真ん中に位置しており、中脳・橋・延髄から構成されます。 脳幹出血は脳出血の中では10%程度の割合で起こると言われますが、生命の維持が危ぶまれることがあるため、脳出血の中でも最も予後が悪いタイプであるとされています。今回はこの脳幹出血について解説します。
脳幹出血の代表的な症状
脳幹は生命維持に必要な機能を司るため、出血によって致命的な症状が生じることがあります。また、脳幹部には、脳神経核といって顔や頚部などに関係する末梢神経の中枢部分が複数あることから、顔や頚部などのさまざまな症状を呈することがあります。 ・意識障害 脳幹には意識の中枢があるため、脳幹出血を発症すると意識障害に陥ることがあります。脳幹出血の程度によりますが、大きな声で話しかけても体を揺さぶっても、簡単に意識状態が改善しないという可能性もあります。普段いびきをかかない方が、突然大きないびきをかくようになった場合には注意が必要です。 ・眼球運動障害 代表的な目を動かす神経には動眼神経、滑車神経、外転神経がありますが、これらの神経がダメージを受けることによって眼球運動障害をきたします。目の動きの悪さはダメージを受けた部位によって異なりますが、片側の目だけではなく、両目とも動かしづらくなり、ものが二重に見えてしまうなどという症状が見られます。 ・片麻痺(片側の体の運動機能の低下) 左右どちらか片側の運動機能の低下のことを片麻痺といいます。脳幹出血を生じると手足や顔を動かす神経がダメージを受けるため、麻痺してしまいます。脳幹部は重要な神経の集合体であるため、画像上は出血量が少なめに見えても重度の神経症状が出現することがあります。 ・構音障害 構音障害とは、音を作る器官やその動きに問題があって発音がうまくできない状態のことをいいます。脳幹出血では口周囲や喉の筋力が低下することがあります。そのため、唇や舌の動きが悪いと喋りづらくなり、声にかすれがあったりうまく声を発することができなかったりします。 ・嚥下障害(飲み込む機能の障害) 脳幹出血によって喉の筋肉を動かす神経が働かなくなるため、飲み込めなくなることがあります。食べ物だけではなく、よだれを飲み込む動作がうまく機能しないため、むせたり食道ではなく気管に入ったりしてしまうことになります。気管に食べ物や液体が入っていくと窒息や誤嚥性肺炎を生じる危険性が高い状態になってしまいます。そのため、このような状況で食事をとる場合には、胃菅といって鼻の穴から胃にチューブを挿入して、そのチューブから栄養剤を胃の中へ流し込むという方法で対応します。