【#佐藤優のシン世界地図探索89】トランプ革命④ 日本も敗北? 命運を握る石破首相
佐藤 そうですね。しかし、その日米同盟と共にロシアとの関係を改善しなければ、中国には対抗できません。 ――民主主義の共有だけでは、すでにダメだと。 佐藤 民主主義的な価値観について、「その価値を共有する」と言葉における合意はします。しかし、民主主義の内実については詰めないということです。 ――お互いに干渉しないということですね。 佐藤 江戸時代、日本には朝鮮通信使が来ていました。日本側は朝鮮が日本に対して挨拶に来て、将軍に対して臣下の礼を尽くしているという一種の冊封(さくほう)としてみていました。しかし、朝鮮側にはそういう意識はありませんでした。巡察であって、朝鮮の辺境である日本を見て歩いているという捉え方です。 つまり、お互い合意はしているけど、その意味については詰めていません。それで安定的な関係を維持できたわけです。 だから、民主主義や人権についても結論合意だけど、その内実についてはあえて詰めないという形になってくると思います。そういう構造転換が起きています。いまの日本のメディアや米国専門の国際政治学者たちには見えていませんけどね。 ■構造転換の渦中の方々 佐藤 国際政治は、王であるトランプ米大統領の登場によってすごく面白くなりました。そして「棲み分けの世界に入ってくる」と気付いているのは、石破茂首相ですよね。すでに中国の習近平と会っているじゃないですか。 ――それはわかっている証拠なんですか? 佐藤 中国もそこを考えているわけですよ。だから、原発の処理水問題も、スパイ容疑で拘束されているアステラス製薬の日本人社員も、次に石破首相が北京に行って、習近平と会談するときに解決しますよ。 ――それは「お互いに干渉しないでね」という話し合いができれば、中国とは話がつくというわけですか? 佐藤 そういうことです。中国も不動産バブルの崩壊が大変で、軍事的な冒険はできません。そして、いま日本が与那国島を要塞化して、米国と一緒に介入して来るんじゃないかという不安感があります。そんな意図がないとわかれば、共存共栄ですよ。 ――なるほど。 佐藤 さらに中国が「日本の海産物の輸入を認める」と言えば、日本の漁業関係者の中国評は全く変わります。 また、空前の儲けを出している日本郵船などの海運業者も大喜びでしょうね。これは、日本の海運ではなくて、中国の物品を運んでいますから。 ――確かにそうです。