【#佐藤優のシン世界地図探索89】トランプ革命④ 日本も敗北? 命運を握る石破首相
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――前回までで西欧の行く末を話していただきました。西欧に続いて、極東・日本も敗北を喫しているのでしょうか? 佐藤 説明していきましょう。 まず、いま起きている少数政党の乱立は世界的な趨勢であり、ヨーロッパと日本が似ているということです。 ――日本は自民党が少数与党となり、いくつかの野党とくっ付いて何とかやっています。これは、わずかに日本が西欧より進んでいるということですか? 佐藤 その意味では日本は進んでいると思います。それは、日本が新自由主義の流れに十分に乗らなかったためです。 少し前まで多くの日本人がずっと米国に留学して、あちらこちらで英語を勉強していました。 ――駅前留学までありましたからね。 佐藤 しかし、いまは内向きになっていて英語学習は以前ほど人気がありません。外国語の習得にはエネルギーが必要です。だから、英語にそんなエネルギーをかけるのは無駄じゃないですか。 ――確かに、筑波大でも英語に堪能な学生は減りました。 佐藤 そして移民政策においても、著しい円安で「為替ダンピング」とも言える状態なので、日本に移民は来ません。そんな賃金の安い国に来るメリットがありませんからね。 だから、移民政策での問題点も西洋と日本では違います。いまの日本は、技能研修生として来させて、パスポートを預かって移動の自由を保障しないとか、昔の置屋みたいなことをしている現状が問題になっています。 ――ある意味、奴隷であります。しかし、『西洋の敗北』(文藝春秋)で話題のエマニュエル・トッドさんは、「日本は大丈夫だ」と言われていたそうですが......。どこが大丈夫なんですか? 佐藤 「世界は単一の原理、すなわち自由民主主義、市場経済で支配されている」というのが米国の考え方です。トランプと大統領選で争ったカマラ・ハリスも「力で民主主義を実現して、世界中を米国のような国にする」と主張しています。 一方でロシアのプーチン大統領は、それぞれの民族や国家には文化、伝統があるから、これを尊重しないといけない。そして、他国の文化、政治制度に関しては、多少の違和感があっても自分が直接危害を受けていない限りにおいては干渉しない。そういう"多元世界"の方がいいんじゃないか、と言っています。 ハリスとプーチンの言っていることを比較した場合、いまの日本人はどちらに共感を抱けると思いますか? ――それだと、ロシアの方ですね。