「死産した赤ちゃん」をゴミ焼却炉に次々投げ込み…千葉県の産廃業者が重ねていた「前代未聞の悪行」
故人との最後の別れを告げる神聖な場所のイメージが強い、火葬場。しかし過去には、驚くべき事件が多数起こっている。 【下駄さんの大人気マンガ】「火葬場で働く僕の日常(4)」無料公開はこちら 元火葬場職員である下駄華緒氏の『火葬場事件簿 一級火葬技士が語る忘れ去られた黒歴史』は、そんな火葬場にまつわる全国各地の事件を丹念に調査した話題の書籍だ。 同書より、千葉県の業者が起こした悪質な事件の詳細を一部抜粋して紹介する。 前回記事〈「裕福な老夫婦」がこっそり火葬炉に入り、自ら点火…かけつけた警察官が仰天した「壮絶死」の哀しい理由〉より続く。
70人の赤ちゃんを焼却炉に…
たとえばいま、あなたが火葬場を開こうと考えたとしたら、いったいどうすればいいだろうか。設備を用意して勝手にはじめてよいのだろうか。 もちろんそうではない。火葬場を開くには、知事の許可をとる必要があるのだ。火葬場や墓地などに関わる墓地埋葬法(正式名称は墓地、埋葬等に関する法律)においても次のように定められている。 「墓地、納骨堂又は火葬場の経営をしようとする者は、都道府県知事(市又は特別区にあっては市長又は区長)の許可を受けなければならない」 こうしたルールがあるため、知事の許可なく誰かを火葬することは、無許可営業として法律違反になる。 今回紹介するのは、この火葬業の許可を得ずに遺体を火葬していた事件である。平成9年(1997)千葉県にて産業廃棄物処理会社の社長であった50代の男とその妻が逮捕された。容疑は墓地埋葬法における無許可営業。つまり、許可を得ずに火葬業を営んでいたということだ。 彼らが火葬していたのは死産児。母親の胎内で亡くなってしまった赤ちゃんの遺体を病院から引き取って火葬していた。 このとき少なくとも平成6年(1994)から約3年間にわたり、5人の赤ちゃんを火葬していたという。しかし、すでに時効になっていたぶんも含めると、なんと累計で70人以上にものぼっていた。
ゴミ焼却炉を使っていた
この会社は産業廃棄物処理会社として、感染性の医療廃棄物などの中間処理の許可を得ていた。そのため、産婦人科医院などから出た医療廃棄物を引き受けて処理していた。 このとき、一緒に赤ちゃんの遺体の処理も委託されていた。 ただ、火葬業のほうの許可は得ていないため、本来ならこのあとに正規の火葬場へ引き渡し、そこで火葬してもらわなければならない。病院側もそのような手順を踏んでいると思っていたそうだ。 しかし、無許可にもかかわらず、彼らは自らの手で火葬していた。そこが法律違反だったのだ。 これだけ聞くと、ただ許可を得ていなかっただけのように思える。しかし、この事件はじつはひどいところもある。 それは、赤ちゃんの火葬方法だ。 きちんとした火葬施設ではなく、自宅にある産業廃棄物用の焼却炉で焼いていたのだ。戸籍のない、死産した赤ちゃんといえども、ひとりの人間。それをごみと一緒の場所で燃やすなんて、とてもひどい話だ。火葬したあとの遺骨は、お寺に持っていって埋葬してもらっていたという。 ここでひとつの疑問が残る。 正規の火葬場でもないのに、お寺に収めるなどできるのだろうか。お寺側から不審に思われたりしなかったのだろうか。 じつはここが今回の事件が複雑化したところなのだ。 彼らは正式な「火葬許可証」「埋葬許可証」を持っていた。つまり火葬業としては無許可ながらも、その時々の「火葬すること」に関してだけは許可を得ていたのである。