「EV逆風下の最高益」中国BYDの強さを読み解く、PHVを積極投入、高いコスト競争力と開発力誇る
■従業員数は75万人 2024年6月末時点での従業員数は75万人に達し、上海汽車の3倍に上る。そのうち10万人規模の研究開発部隊は人海戦術とデジタル技術の融合で技術革新に取り組んでいる。外資系サプライヤーから調達した部品を分析・学習し、製法の開発や機械の内製を実現した事例も少なくない。 3つ目は徹底的コスト削減だ。BYDは独自の技術を採用し、サプライチェーンの垂直統合および規模の経済で強い競争力を維持している。
車載電池やモーターなどのコア部品からランプ、パワー半導体、エアコン、電子部品まで自社で生産しており、ボディーと電池を一体化するCTB(Cell to Body)や、モーターや減速機などの12部品を一体化させた「12 in 1」eアクスルなどを開発し、車両コストの削減につなげている。 ■成長力でサプライヤーを惹きつけて競争を促す また部品サプライヤーに対して調達先の固定化を避け、競争を促すことで、常に最も安い部品調達先を確保する調達方針を取っている。BYDが強気な姿勢を取れる背景には、高い成長力でサプライヤーを惹きつけ、優位な立場がある。
BYDは高いコスト競争力を武器に低価格で高性能なPHVの商品ラインナップを充実することでエンジン車メーカーからシェアを奪っている。中国乗用車市場に占めるBYDのシェアは2019年の2.2%から今年1~6月には14.1%へと大きく上昇した。 一方、強さばかりが語られるBYDに死角はないのか。決算データの中でも浮かぶネガティブな要素は3つある。 1つ目は自動車・部品事業の成長が鈍化していること。 2024年1~6月の同事業の売上高は9%増だった。過去2年間の同事業の売上高平均伸び率(1.6倍)から急ブレーキがかかった。前述した通り、この間の新車販売台数が28%増であり、平均単価が大きく下がっている。果敢な値下げは諸刃の剣といえる。