「EV逆風下の最高益」中国BYDの強さを読み解く、PHVを積極投入、高いコスト競争力と開発力誇る
中国EV市場が減速するなかでもBYDが収益力を維持できる背景には3つ要因がある。 1つ目は販売台数の増加であり、それを牽引するPHVの強さだ。 1~6月のBYDの新車販売台数は28%増の161.3万台。そのうち、EVが17.7%増だったのに対して、PHVは39.5%増だった。1~6月の同社販売台数に占めるPHVの割合は55%で、PHVのシェアは前年同期から4.5ポイント上昇した。 EVの減速をPHVでカバーする、まさに二刀流の強みといえる。ちなみに7月(単月)はEVが3.5%減、PHVは66.9%増となっている。
■価格破壊と豊富なラインナップでライバルを圧倒 BYD自身がPHVを強化する戦略を鮮明にしている。 今年2月から主力車種(EV、PHVとも)を値下げし、価格競争の口火を切った。中でもライバルに衝撃を与えたのが、コンパクトセダンの「秦PLUS DM-i」。特にPHVの最廉価グレードは約8万元で、購入税10%の免除措置を受ければ、同じセグメントの人気車種である一汽トヨタのカローラのガソリン車モデルより約3割も安くなる。
5月以降、セダン「秦L」や「海豹06」、多目的スポーツ車(SUV)の「宋LDM-i」や「宋PLUS DM-i」、新型スポーツセダン「海豹07DM-i」などのPHVモデルを相次いで投入した。 2つ目は、製品技術の向上だ。 BYDは今年5月、同社の最新PHV技術「第5世代DM-i」を搭載した新モデルを投入し始めた。エンジンの熱効率は世界最高水準となる46.06%、100㎞当たりの燃費は2.9ℓを実現し、PHVの航続距離(エンジン・モーター走行と電動モード走行の組み合わせ)は2100㎞に達した。
日本勢が得意とするハイブリッド車(HV)と比較しても、優位性を持つPHVのパワートレーンを実現した。これまでHVを含むエンジン車に乗っていた消費者が、PHVに乗り換える流れを作り出した。 こうした技術向上を支えるのが研究開発(R&D)に対する積極的な姿勢だ。2024年1~6月のR&D費は41.6%増の211.7億元、純利益の1.5倍に相当する規模である。売上高R&D比率は2022年の4.9%から2024年1~6月には7.0%へと上昇している。研究開発力の強化はBYD躍進の大きな要因だろう。