ローファーはなぜ靴擦れするのか?“足が痛くならない方法”をプロが指南
こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。 ローファーを履いて靴擦れをしたり、足が痛くなった経験のある方は多いと思います。名前の由来のとおり、「ローファー=怠け者=脱ぎ履きしやすいだけの靴」です。正直言って、そもそも長距離を歩くための靴ではないのでこれは仕方ありません。では、選び方にコツはあるのか? それは、まず第一に「履いた瞬間に痛くない」。そして、次に「底の返りがよい」ことが大事です。 ⇒【写真】ローファーの元祖と名高いメーカーの名モデル
履いた瞬間に「痛い」はNG
シューフィッターの経験上、革はなじむ・伸びるとはいっても程度に問題があって、ローファーはしょせん「高級つっかけ」なので、足になじませて履くような靴ではありません。履いた瞬間に違和感のあるものを選んではいけません。何か当たる感触も甲やカカトだけでなく、サドルと呼ばれるストラップの付け根も要注意。手縫いでぐるぐる巻いている場合、ここにも当たったらアウト。 また、紐靴のように単純に「幅」「サイズ」という数字がほとんどあてにならないので、試着せずに買うのは論外だと思ってください。履いて、数歩歩いたファーストインパクトがすべてです。「ちょっとゆるくて、どっか当たるかも」は即NG。「ややタイトでカカトが脱げない」は合格です。
曲がりやすさが最重要、ド定番はやはり「BASS」
次に、「底の返り」ですが、マッケイ製法を選ぶのが正解です。靴の本体と底をぶち抜きで縫った靴のことですが、その分「底の返り(曲がり)」がよく、足の動きに食いついてきます。具体的には、アメリカのG・H・BASS。「ウィージャンズ」というモデルが世界的に有名です。 お値段も3万円台と、本格靴にしては良心的。ローファーの元祖と名高いメーカーの名モデルです。革底の裏に縫い目が見えますが、これが本体と直接縫われているので、靴の中をのぞくと中からも糸が見えます。 足の動きに本当によくついてくるので、短期間でどんどん履きやすくなるのが特徴です。筆者は15年ほど靴のリペアにも携わりましたが、BASSが変な壊れ方をしているのを見かけたことがありません。それほどに完成されたローファーだと言っていいでしょう。 本格靴にありがちな「グッドイヤーウェルテッド製法」に比べ、マッケイ製法はつくりがシンプルなので安く見られがちですが、そんなことはありません。むしろ足の細かい動きについてくるぶん、小股でピッチが速い日本人の歩き方には最適な製法だと断言します。かのマイケルジャクソンも「スリラー」のPVではマッケイ製法の靴を履いています。 また、糸が数か所切れたところで「ねじりながら縫っている」ので、底剥がれの心配はなく、本体そのものも革の袋状の「リアルモカシン」でできているので、履き心地はさながらソックスのようで、グッドイヤーにはできない製法なので、ローファーを選ぶならマッケイ製法がいいでしょう。 ただしBASSの場合はマッケイ製法とはいえ、体重の重い外国人を想定しているので、作りは全体的に硬めです。履きならすのに1か月程度は見ておく必要があります。