松本清張、アガサ・クリスティー…考古学から迫るミステリー小説の世界 謎解きの鍵を展示
松本清張、アガサ・クリスティーなど古代遺跡を舞台にしたミステリー作品に考古学の視点から迫る企画展が、奈良県橿原市の県立橿原考古学研究所付属博物館で開かれている。謎解きの鍵として小説に登場する考古遺物などを展示し、同館は「ミステリーファンも考古学の世界を堪能してほしい」としている。来年1月19日まで。 企画展のタイトルは特別陳列「ミステリー小説の中に考古学が登場する件」。国内外のミステリー小説に関係する遺物など約100点を展示している。 松本清張の『万葉翡翠(ひすい)』は、考古学研究室の学生が万葉歌をもとに翡翠の原石を探し求めることから事件に発展するストーリー。会場では、清張の写真とともに遺跡で出土したヒスイの勾玉が並べられ、小説の登場人物が古代の宝石にいかに魅せられたかが実感できる。 テレビドラマで知られる万城目学(まきめまなぶ)の『鹿男あをによし』のコーナーでは、3匹の獣が描かれた古代鏡を探す場面にちなんで、神や獣の像がある黒塚古墳(天理市)出土の三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)を展示。平成20年放送のドラマのロケでは、玉木宏さんや綾瀬はるかさんが同館を訪れており、会場ではその様子を再現したイラストも並ぶ。 担当者の展示解説は今月21日、来年1月11、18日午後2時から。1月12日午後1時からは橿考研講堂で絹畠歩(きぬはたあゆむ)主任研究員らの講演が開催される(無料)。 企画展は博物館の入館料が必要。休館日は毎週月曜(1月13日は除く)と年末年始(12月28日~1月4日)、1月14日。同館(0744・24・1185)。 ◇ フィクションとしての推理小説と、遺跡や遺物など物証主義の考古学を結び付けたユニークな企画展を担当したのが、県立橿原考古学研究所付属博物館の若手研究員、伊東菜々子さん(25)。推理小説はほとんど読んだことがなかったというが、企画に当たって数々の名著に触れるうちにミステリーの世界に引き込まれた。 今回の企画が持ち上がったのは5月。「考古学ファンのすそ野を広げたい」と、吉村和昭学芸課長がミステリーに着目。同研究所の絹畠歩主任研究員が、松本清張の作品と考古学の関係について論文を執筆して話題を集めたこともあり、「今回は、発想が柔軟な若手に任せてみよう」と伊東さんに白羽の矢を立てた。