松本清張、アガサ・クリスティー…考古学から迫るミステリー小説の世界 謎解きの鍵を展示
伊東さんは、松本清張の魅力を知るため、ベストセラーの『点と線』から読み始めた。考古学と関係のないストーリーだが、小さな事実を積み重ねて犯人に迫る手法は、歴史を解き明かす考古学に重なると感じた。
飛鳥時代の謎の石造物「酒船石」(奈良県明日香村)が登場する松本清張の『火の路(みち)』などを読み込み、遺跡に足を運びながら展示のイメージを膨らませた。
海外作品では、アガサ・クリスティーの『メソポタミヤの殺人』を「毒」のテーマで展示した。考古学研究室にあった陶器洗浄用の塩酸が殺人に使われたとの一節が気になり、橿考研の保存科学担当の先輩らに塩酸の使用法を確認すると、「陶器や土器の洗浄には使わない」と教えられた。「小説と事実はやはり違うんだ」と新たな気づきもあった。
企画展のパンフレットには、発掘現場を舞台にした伊東さんオリジナルのミステリー作品も掲載した。「入館者が楽しく謎解きをしながら博物館をめぐってもらえれば」との思いだ。
(小畑三秋)