36号車au TOMS、今季3勝目で連覇に華添える。GT300は88号車JLOCが破竹の3連勝で大逆転王座|スーパーGT最終戦鈴鹿
12月8日、鈴鹿サーキットでスーパーGT第5戦(最終戦)の決勝レース(51周)が行なわれた。優勝はGT500クラスが36号車au TOM'S GR Supra(坪井翔/山下健太)、GT300クラスが88号車VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)で、この結果GT300のチャンピオンが小暮、元嶋組に決まった。 スーパーGT最終戦鈴鹿:決勝順位 当初9月1日に開催予定だったこの鈴鹿戦だが、台風接近の影響を受けて12月に延期。シリーズ最終戦として行なわれることになった。最終戦のため基本的にはサクセスウエイトなし、さらに低温のコンディションでエンジンパワー、ダウンフォース共に高まる傾向となるため、予選では各クラスのコースレコードが更新された。 なおGT500クラスのタイトルは予選の段階で36号車au TOM'Sの坪井翔、山下健太組に決定済。GT300のタイトル争いに注目が集まった。 12時50分にスタートされた決勝レース直前のコンディションは気温13℃、路面温度19℃。冷たい風が吹く中、真冬の最終決戦がスタートしていった。 ■GT500クラス GT500のポールシッターは36号車au TOM'S。ボーナスの3点を手にしたことで、決勝を待たずして王座を確定させた形だ。2番グリッドには17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTが並び、予選3番手の14号車ENEOS X PRIME GR SupraはQ2で他車の走行妨害があったとしてグリッド降格になったことに伴い、3番グリッドは24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zとなった。 警察車両による1周のパレードラップ、2周のフォーメーションラップを挟んでレーススタート。首位36号車au TOM'S、2番手17号車Astemoのオーダーは変わらなかったが、3番手スタートの24号車リアライズはスピードが上がらず1周で最後尾まで転落し、3番手は100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTとなった。 5周目あたりから早々にGT300のトラフィックをかき分けながらの走行となっていたが、10周目のデグナーで塚越広大がドライブする17号車Astemoがコースオフ。GT300車両である87号車METALIVE S Lamborghini GT3の坂口夏月と絡んだようで、バリアにクラッシュした87号車の回収のためフルコースイエロー(FCY)が出された。17号車は大きなダメージこそ見受けられなかったが、ポジションを3つ落として5番手となった。 そして、今回の鈴鹿戦がスーパーGTラストレースとなるロニー・クインタレッリ(23号車MOTUL AUTECH Z)も躍動した。今季思うようなパフォーマンスを出せなかったことが引退の理由とも明かしていたクインタレッリだったが、11番手スタートとなった自身の担当スティントでは攻めの走りを披露。シケインで14号車ENEOSの福住仁嶺をアウトから豪快にオーバーテイクするなど、今も失われていない切れ味を見せつけた。 GT500はドライバー交代を伴うピットストップができるミニマム周回である17周から一気にピットが慌ただしくなった。20周で全車がルーティンストップを済ませると、上位陣は36号車au TOM'S、3号車Niterra MOTUL Z、17号車Astemo、100号車STANLEY、12号車MARELLI IMPUL Zという順に。特に8番手スタートから追い上げてきた3号車Niterraの三宅淳詞は36号車au TOM'S山下健太の背後まで迫っており、首位争いが一気に激化した。 3号車Niterraの三宅は首位の36号車au TOM'S山下を果敢に攻め立てるが、決め手にかけオーバーテイクには至らず。そんな中、31周目にGT300車両のストップでFCYが出された。山下はGT300車両のバックマーカーに引っ掛かり、追い抜こうとしていたところでFCYになったこともありタイムロス。3号車だけでなく、17号車Astemoの太田格之進まで背後に迫る展開となった。 そして山下がデグナー2個目に差し掛かるところで、FCYが解除された。山下は冷えたタイヤでリヤをスライドさせながらもなんとかコントロールしてGT300車両を交わしていったが、その後ろの三宅は痛恨のスピン。これで3号車Niterraは6番手に転落した。 代わって2番手となった17号車Astemoの太田は、36号車に離されることなくついていき、残り4周のシケインでは鋭い飛び込みで一瞬前に立つことに成功したが、結局追い抜きには至らず。36号車はそのままトップチェッカーを飾り、今季3勝目でタイトルに華を添えた。2位は17号車Astemo、長年のメインスポンサーであるマレリ(旧カルソニック)とのラストレースになった12号車IMPULは、最後尾から3位まで追い上げるという会心のレースを見せた。 ■GT300クラス GT300のポールポジションは、逆転タイトルを狙う88号車JLOC。その88号車を8ポイントリードしてランキングトップにつける65号車LEON PYRAMID AMGは10番手に沈んだ。なお、61号車SUBARU BRZ R&D SPORTに続く予選3番手の2号車muta Racing GR86 GTは、65号車とのポイント差が19ポイントとなっていたため、わずかながらチャンピオンの可能性を残していた。 オープニングラップでは上位陣のオーダーは変わらず。そこからは淡々とレースが進んでいくかに見えたが、10周目(GT300は9周目)のデグナーで、上位争いをしていた87号車METALIVE S Lamborghini GT3がGT500クラスの車両と絡みタイヤバリアにクラッシュ。これでFCYが出された。 またトップを行く88号車JLOCには、スタート手順違反(フォーメーションラップ時の速度管理)の検証が行なわれ、この裁定がタイトル争いにも大きな影響を与える可能性もあったが、結局警告を意味する黒白旗の提示のみとなった。 88号車JLOCは元嶋佑弥のドライブで首位を快走。一方でタイトル獲得のためには優勝が絶対条件である2号車mutaは、2番手を走る61号車SUBARUに行く手を阻まれる形となっていたため、2号車の平良響は背後で再三に渡ってチャンスをうかがっていた。そして平良は17周目に61号車を攻略すると、先頭を追った。 ポイントリーダーの65号車LEONは15周を走って真っ先にピットに入ってきた。ピットボックスにはタイヤが用意されていたが交換せず。ブリヂストン勢が得意とするタイヤ無交換作戦で作業時間、アウトラップでマージンを稼ぐ作戦に出た。 2号車mutaがレース折り返しを過ぎるまでピットストップを引っ張る中、ルーティンストップ消化組の首位はこちらもタイヤ無交換の31号車apr LC500h GT。次いでリヤ2輪交換の88号車JLOCで、その5秒ほど後方には65号車LEONが迫っていた。そして2号車mutaは25周でピットインして平良から堤優威にドライバー交代したが、当然のようにタイヤ交換はなし。31号車の前、つまりトップでコースに復帰することができた。 タイヤ無交換勢に囲まれる中、フレッシュなリヤタイヤを履く88号車JLOCは、小暮卓史のドライブで猛チャージを開始。上位陣では最も速いペースで周回を重ねると、 34周目には31号車aprを交わして2番手に浮上。ペースが落ち始めた首位2号車mutaとの差をぐんぐん縮めていった。 決着の時は残り10周で訪れた。最終コーナーでリヤが流れた2号車を小暮がロックオン。ホームストレートで先頭に立ち、タイトル獲得に向けても大きく視界がひらけた。 小暮はそのままトップでチェッカー。65号車LEONも追い上げを見せていたものの、結局2号車muta、31号車aprに次ぐ4位に終わり、88号車の小暮、元嶋組が大逆転でのシリーズチャンピオンとなった。8戦4勝、3連勝でシーズンを締め括り、JLOCとしても初のタイトル獲得と、歴史的な1年となった。
戎井健一郎