卸先に販売価格を指定するのは独禁法違反? アパレルの「小売価格」を巡る疑問を解説
2024年8月、日清食品がカップ麺の店頭価格を指定した水準まで引き上げるよう小売業者に要請したことが独占禁止法違反(再販売価格の拘束)の疑いがあるとして、公正取引委員会が同社に対して警告を行った。同件は食品業界での事例だが、ファッション業界においても、ブランド側が小売店にセール販売を認めないケースなどが見られるものの問題化されていない状況や、そもそも小売価格についての理解や認識が曖昧な現状がある。そこで本稿では、日清食品が公正取引委員会から警告を受けた理由から、販売価格について独占禁止法で定められている内容、ファッション業界での事例まで、ファッションローに詳しい平川裕氏が弁護士への取材をもとに解説する。
希望小売価格での販売を求めることは違法?公取委から警告を受けた日清食品のケース
日清食品は、カップ麺の希望小売価格を値上げした際に、スーパーやドラッグストアなど全国の小売業者に対して、値上げ後の希望小売価格で販売するよう要請。また、セール時についても同社が決めた価格で販売することを求めていた。同社の担当者が小売の各店舗に出向いて店頭価格を確認し、価格の引き上げに応じていない店舗には、同社が決めた価格で販売するよう要請するケースもあった。そのほか、競合店にも同様の要請を行っていると伝えたり、要請を受け入れるまでセール時の特売価格での販売ができないと示唆していたという。公正取引委員会は、同社の一連の行為は独占禁止法が禁じる「再販売価格の拘束」に該当する恐れがあると判断し、行為の取りやめや再発防止を求める警告を出した。 「再販売価格の拘束」とは、自社が販売する商品を購入した相手に対して、当該商品の再販売価格を定めて守らせることや、販売価格の自由な決定を拘束することを指す。独占禁止法ではこれを禁止している。また、「メーカー希望小売価格」のように、「希望」を伝えるだけであれば「再販売価格の拘束」に当たらないが、「いくら以上」または「いくら以下」で売ることを強制すると「再販売価格の拘束」に該当する。