「目が見えない人のメイク術」とは? さまざまな障がいを持つ人が訪れるコスメブランドOSAJIの挑戦
障がいのある方も、OSAJIに来やすい理由
――メイクアップアーティストの後藤さんは、実際店頭でブラインドメイクの接客をされているそうですね。 後藤勇也さん(以下、後藤):私は月に3~4回、週末に店舗でメイクイベントを行っていますが、視覚障がいの方だけでなく、聴覚障がいの方なども接客させていただくことがあります。OSAJIに入社する前、20代のときには別の化粧品ブランドの店頭で10年間ほど下積みしましたが、障がいがある方の接客をした経験は1~2名ほどだったと記憶しています。ですがOSAJIに入ってからは、聴覚障がいなどの障がいがある方を2ヵ月に1回ほどは接客しています。メイクレッスンを予約して来てくださることが多いですね。 ――OSAJIに障がいを持った方が多くいらっしゃるのはなぜなのでしょうか。 後藤:私もその理由を捉えきれてはいないのですが、OSAJIがその他の化粧品ブランドと差別化される点として、「食べる美容」「読む美容」など、外見の美しさだけでなく、精神やマインドにも働きかけるようなブランディングを行なっています。もしかしたら、お客様はそういうところを見てくださっているのかな……と、想像の範囲ですが思っています。 酒井:OSAJI代表の茂田は元々サウンドエンジニアをしていて、化粧品業界とは全く違う畑の人でした。ですが、お母さまが交通事故に遭ったことがきっかけで、これまで使っていた化粧品が一切肌に合わなくなり、困り果てている様子を見て、皮膚科学研究者だった叔父に師事するかたちで化粧品の勉強を始めました。そして、独自に配合した化粧品がお母さまの肌に合った。それがOSAJIの原点なんです。 それにOSAJIでは、佐賀県にあるB型の障がい者施設「PICFA〈ピクファ〉」の方が生み出したアートをパッケージに落とし込むという取り組みや、「ねば塾」という長野県にある福祉事業所の方々に製造をお願いしている化粧品もあります。半熟石けんの「ローソープ」というOSAJIの人気商品で、グリセリンリッチな泡は非常にもっちりとした独特のテクスチャで、スッキリとしつつもうるおい感のある洗い上がりが特徴です。 石けんの充填作業から瓶へのラベル貼り、そして木べらの取り付けまで、全てを手作業で一つひとつ大切に扱いながら商品を作ってくれます。ねば塾さんにとっては『手作業』は得意分野。他の工場では製造を断られましたが、「ねば塾」の皆さんはそんな時間がかかる作業にも根気強く丁寧に取り組んでくださる。そうした取り組みやUBAの活動をOSAJIとして全面に出しているわけではありませんが、「UBA在籍店舗」を明記してあるOSAJIの店舗リストなどを見て共感をいただいているのかなと思います。