【インタビュー】『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』展は韓国・ソウルのザハ・ハディド設計のDDPにて最終章へ。
展示室は「風」「実」「森」「種」「土」といった自然や植物にまつわる名前をもち、有機的に繋がり合いながら構成されている。2019年の時からこのコンセプトは変わることなく続き、それ以降に新しく生まれたデザインもシームレスに仲間に加わっている。新しいものと懐かしいものが溶け合うようにしたのには、一貫した皆川の想いがある。 「ミナ ペルホネンがこの30年間で志してきたのは、流行のように移ろい消えていくものではなく、個人の記憶の中で循環していけるようなデザイン。ひとりひとりの日々の暮らしに根差した服は、持ち主の思い出とともに大切に育てられていきます。そんなパーソナルなデザインはワンシーズンで終わることはありません。だから、この展覧会では、ここから先が新しいもの、といったように時間の継ぎ目を見せることなく、新しいものも古いものもミックスして展示しているんです」(皆川) 「種」の展示室では、〈ミナ ペルホネン〉のジャンルにとらわれないクリエイティビティを紹介。世界的なサステナビリティのトレンドに先駆けて、〈ミナ ペルホネン〉は創業以来、素材を余すことなく使い、余ったはぎれを無駄にすることなく、バッグやアクセサリーを制作。 これらは、物質的な無駄を減らすことのみならず、「アイデアや発想力を働かせる」=「はたらくこと」を捨てないということにも繋がっていくと皆川はいう。たとえば、北欧への社員旅行で大雨が降った際にゴミ袋をポンチョのようにしてレインコート代わりにした経験から新しい服のアイデアが生まれたり、はたまた、ピーター・アイビーと皆川が共作した《欠片が濾過する光の境界》では、欠けてしまったグラスを薄いガーゼで柔らかく包み込んだタペストリーを制作したり。 作品からこぼれたはずの「かけら」が、小さなデザインの種となり、循環して再び生まれ変わる。そんなふうにして世界中のブランドやクリエイターとのコラボレーションを重ねながら、〈ミナ ペルホネン〉のクリエイティブの幅は年輪のように広がっている。