職場健診の胸部レントゲン検査は「意味がない」...!?毎年恒例の検査を「受けなきゃいけない」本当の理由
不安な人は更なる検査を
結論から言うと、職場健診で肺がんが見つかる可能性は、かなり低いということになります。ですから職場健診で問題がなかったとしても「肺がんではない」とは言い切れませんし、早期発見という意味では、必ずしも十分ではありません。不安なひとは肺がん検診、とりわけCT検査を受けたほうがいいでしょう。 一方、健診のレントゲンは受けたくない、と思うひとがいるかもしれません。しかし労働安全衛生法で、会社は社員の健診の実施を義務付けられていますし、社員は会社の命令に従う義務があります。そのためレントゲンを拒否すると、最悪は懲戒処分ということもあり得ます。実際に過去において、そういう事例がありました。最高裁で「懲戒処分は妥当」という判決が出ていますから、抵抗はほどほどにしておいたほうが良さそうです。 とはいえ胸部レントゲン写真では、結核やがん以外の病気や異常も見つかることがあります。たとえば心臓肥大や、大動脈瘤、初期のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などが見つかることもあります。最近は「非結核性抗酸菌症」という、結核ではないけれど結核とよく似た慢性の肺感染症が増えています。健診がきっかけで見つかるひとが多いと言います。 だからあまり面倒がらずに「まあ仕方がない、これも仕事のうちだ」と思って、受けてください。 『1分で終わる簡単検査で「命を救える」!? 呼吸器検査で発見できる「重大な病気」の正体とは』へ続く
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)