「もう君らを信頼できない」…自ら授業放棄した中学教師が、それでも保護者から「大応援」される深いワケ
事件を乗り越えたとき、保護者たちは「大応援団」になった
このような調子で、応援してくれる保護者、批判する保護者それぞれと、1週間あまりで100通にのぼる手紙をやりとりした。あわせて日記指導を中心に生徒指導に力を注ぎ、「いじめ」を撲滅する手を次々と打っていった。その詳細は別の機会に述べたいと思うが、ある日「いじめ」を受けていたAが、日記に次のような決意を書いて私に提出してくれた。 「お母さんのかいた日記と長谷川先生の返信とが僕をゆうきづけ、この中学校にいられるじしんがつきました」 これでひとまず解決できたと判断した私は、授業を再開した。 Aはその翌年も私の学級だったが、「いじめ」が再燃した様子は見られず、友人が増え、笑顔も増え、楽しく生活できている様子がうかがえた。 いじめ事件はこうして幕引きとなったが、授業を自ら放棄した担任(私)と、それぞれの生徒の保護者たちとの関係は、その後どうなっただろうか。 なんと、保護者が「大応援団」になってくれたのである。当時の私は安アパートで独り暮らしだったが、野菜やおでん、カレーを差し入れてくれた方がいた。学級や学年経営に積極的に協力してくれるようになった人も、数知れない。 このときの経験が、いまの私につながっている。私は教師になったのではなく、保護者の力で育てられ「教師にしてもらった」のだ。保護者とは本来、そのようなエネルギーを秘めた存在なのである。そして保護者のエネルギーを引き出すためには、教師が熱をもって、オープンマインドにぶつかっていくことが、何よりも大切なのである。 後編記事〈親に「やめなさい」と苦言…それでも「クレームなし」の中学教師はどんな保護者対応をしているのか〉へ続く。
長谷川 博之