「エルサレム」とはどんな場所か? 地理的、歴史的に振り返る
昨年末に米国トランプ大統領が「イスラエルの首都」と認定したことで注目を集めたエルサレム。その面積は郊外を含めて652平方キロメートルと、東京23区(612平方キロメートル)とあまり変わりませんが、この街は中東一帯の火種であり続けました。エルサレムとは、どんな場所なのでしょうか。(国際政治学者・六辻彰二) 【動画】4度にわたり衝突「中東戦争」ってどんな戦争だった?
●3つの宗教の聖地である由来
イスラエルとパレスチナの間の対立において、エルサレムは常に大きな問題であり続けました。それは、この街がユダヤ教、キリスト教、イスラム教にとって、それぞれの聖地であることによります。
紀元前10世紀にこの地を治めたソロモン王は、聖書によると、 モーゼが神から授かった十戒の石版を祀(まつ)る神殿をエルサレムに建設。このソロモン神殿は紀元前6世紀、バビロニアに破壊されました。その後、ユダヤ人たちが神殿を再建し、ヘロデ王が増改築しましたが、紀元前70年 、ローマ帝国によって破壊されてしまいます。しかし、その遺構は「嘆きの壁」と呼ばれ、ユダヤ教徒にとって神聖な祈りの場になっています。
また、この地はイエスがローマによって十字架に架けられ処刑された土地でもあります。そのため、イエスの墓である「聖墳墓教会」があるとされるエルサレムは、イエス生誕の地であるベツレヘムなどとともに、キリスト教徒にとっても宗教的に重要な街なのです。
そして、イスラムの預言者ムハンマドは621年にエルサレムから天に昇り、神から言葉を授かったといわれます。この伝承により、エルサレムはイスラム教徒にとっても、メッカ、メディアに次ぐ聖地となり、ムハンマドが「昇天」したといわれる地点に「岩のドーム」や「アルアクサ・モスク」が建設されました。これらは嘆きの壁の上にあるイスラム教徒地区に建っています。 これら三宗教にとって聖地であることからエルサレムは、11世紀に始まった十字軍をはじめ、近代以前から争いの舞台となってきました。