船井電機の実質負債800億円、多額の引当不足が露呈
10月24日、東京地裁から破産開始決定を受けた船井電機(株)(TSR企業コード:697425274、大東市)は、今年9月末時点で117億円の債務超過に陥っていたことがわかった。東京商工リサーチ(TSR)が独自入手した破産申立書より判明した。
2021年3月末の現預金残高は約347億円あったが、「10月25日の従業員給与(1億8,000万円)を出金すると運転資金が1,000万円を下回る」(申立書)状態だった。また、親会社の船井電機・ホールディングス(株)(TSR企業コード:570182948、同所、船井電機HD)も実質214億円の債務超過で、「早晩資金繰りが行き詰まる可能性」と記載されている。 船井電機の親会社である船井電機HDに対する貸付金は、253億円(2024年9月末)。船井電機HDは船井電機に不動産などを賃貸し、この賃料が収入の柱だったが、船井電機の破産により資金繰りの柱を失った。 船井電機HDの試算表によると、9月末時点の現預金は785万円。資産総額は約382億円、負債総額は約262億円だが、資産の82%を船井電機など関係会社株式(317億円)が占めている。この大半が船井電機の株式だったが、破産で価値が毀損している。こうしたことなどを加味すると船井電機HDは「214億円の債務超過となる」(申立書)という。 船井電機の試算表によると、9月末時点の資産総額は643億円、負債総額は474億円だ。だが、船井電機はミュゼプラチナシステムズ合同会社(TSR企業コード:697015947、横浜市)の金融債務33億円を保証しており、金融機関から保証の履行を請求されており、債務が顕在化した。また、船井電機HDに対する貸付金(※1)(253億円)が回収不能だ。さらに、関係会社株式は230億円が計上されているが、申立書では関係会社について、「債務者(TSR注:船井電機)の資金繰り悪化により単体で資金繰りを維持することが困難な会社が含まれており、その株式は相当程度無価値となることが想定される」と記載している。 (※1) 船井電機の試算表(2024年9月末)のうち、貸付金は長短合計で506億円。このうち、船井電機HD向けは253億円(短期70億円、長期182億円)。その他は関係先などへの貸付金 このため、合計483億円(貸付金253億円+関係会社株式230億円)に対する手当が必要だが、9月末の試算表の引当金合計は200億円にも満たない。 適正な引当金や関係会社株式の評価損を加味すると、単純合算で負債総額は約800億円(2024年9月末の負債総額474億円+船井電機HDへの貸付金253億円+関係会社株式230億円-引当総額188億円+保証債務33億円)となる。 また、船井電機グループの2024年3月期の連結決算は、売上高850億9,400万円、営業損失は59億1,700万円の赤字だった。今年の4月以降は毎月3億~8億円の営業赤字が続いていたという。 こうした業績や資金繰り悪化の背景は、船井電機HDが2023年4月に買収した(株)ミュゼプラチナム(現:(株)MIT、TSR企業コード:300036639、大田区)への資金支援などによる多額の資金流出も大きかったようだ。 申立書によると、船井電機の単体従業員は532名、連結子会社(31社)を含めると2,160名に達する。多くの関係者を巻き込んだ破産は、関係先への影響にも注目が集まっている。 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2024年10月30日号掲載「取材の周辺」を再編集)