IHIで絶えない「品質不正」、職場風土の大問題、エンジン「燃費データ」を40年にわたり改ざんか
IHIでは、5年前の不適切行為を受けて再発防止策を策定し、全社員に対してコンプライアンス・リカレント教育を実施、そして現場と経営陣による対話活動などを行ってきた。 こうした活動のすべてが無意味だったわけではないようだ。IHI原動機では2023年4月に村角敬社長が就任し、少人数グループでの話し合いの場を持つ中で、今年2月下旬に声を上げた従業員が出た。その申告をきっかけに社内調査を実施し、長年の不適切行為が発覚した。
だが、40年にわたるデータ改ざん、そして前回の航空機エンジンの品質問題から5年。経営陣が不正の実態を把握するまで、あまりに時間がかかったと言わざるをえない。 ■コンプラ意識をグループに浸透させられず 盛田副社長は、「今回のような長い間ずっとやってきたことはなかなか言葉に出せない。どうやって従業員が安心して言えるようにするか。その仕組み作りが必要」と話す。IHI社員に取材をすると、「過去に買収した企業など、グループ全体への意識改革が行き届いていないのが実態」という声も上がる。
今回不正が発覚した2つの工場は、もともと新潟鐵工所のものだ。東証1部上場の名門企業だったが2001年に倒産し、事業を切り分ける形で、2003年にIHI(当時は石川島播磨重工業)へ原動機事業が承継された。 その後、2019年にIHIグループで原動機を扱う複数の会社を再編し、IHI原動機として再出発している。「IHIによる管理体制は強まったものの、会社の母体となった新潟の旧体制とIHIの新体制ではいまだに距離があり、適切なコミュニケーションが取れていなかったのではないか」(同社員)。
特別調査委員会による詳細な調査はこれからだが、会社側は今回の問題の背景として「コンプライアンス意識の欠如」や「職場風土の問題」を挙げている。グループ全体に深く根差す問題だけに、再発防止策の策定は一筋縄ではいかないだろう。 IHI原動機の売上高は740億円(2023年3月期)、船舶向けエンジンはその5割を占める主力事業だ。同社は近年、赤字と黒字を行き来しており、2023年3月期は18億円の営業赤字だった。