IHIで絶えない「品質不正」、職場風土の大問題、エンジン「燃費データ」を40年にわたり改ざんか
会社側は、「今回書き換えがあった燃費消費率は、エンジンの性能を示すものであり、安全性に直接影響する数値ではない」(盛田副社長)とするが、国交省はNOx(窒素酸化物)規制の順守を確認するまで、IHI原動機への証書交付を停止した。事実上、エンジン出荷が停止する見通しで、業績への悪影響は避けられないだろう。 顧客対応については、過去に出荷したエンジンの交換はせず、顧客ごとに補償の交渉を進めていくものとみられる。今後の補償費用など決算への影響については「精査中」とし、明確なコメントは避けた。
■2024年3月期は690億円の赤字に IHIのグループ全体の売上高は約1.3兆円で、IHI原動機が占める割合は5%程度にすぎない。しかし、IHIグループにとって、今回の品質不正発覚のタイミングは最悪だ。 IHIは昨年、国際共同開発の航空エンジンプロジェクトで約1600億円もの巨額損失を計上、5月8日に公表する2024年3月期決算は690億円の最終赤字に転落する見込みだ(詳細は「IHIの過去最大赤字を招いた『割に合わない』契約」)。
今後は国の防衛予算が膨張する中で、防衛・宇宙分野などでの受注や投資拡大が見込まれる。IHIは、日本、イギリス、イタリアで進める次期戦闘機の国際共同開発プロジェクトに、戦闘機用エンジンの担当企業としても参画する。 巨額赤字からの再起をかけるタイミングで品質不正の問題が再燃したことは、顧客の信頼や生産・開発現場の士気を大きく損なう事態にもつながりかねない。子会社の不正の代償は決して小さくはない。
秦 卓弥 :東洋経済 記者