【三浦しをんさんインタビュー】最後尾で敵に追われても寝る(笑)。時にはそんな胆力も必要かも!
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小説のみならず、エッセイのおもしろさも支持されている、作家の三浦しをんさん。最新刊は2019年から2023年までの約4年の日々が綴られていますが、今までになく「日々のことを書き続けてきてよかった」と感じる一冊になったのだそう。 「私は日記をつける習慣がないし、エッセイ用のネタ帳も作っていないので、この本のもとになっている、月1回の女性誌での連載が“その時のリアルな記録”なんです。今、読み返してみると感慨深いですね。新型コロナウイルスが流行り出す前の生活から始まり、外出の自粛要請が出た頃のこと――そういや和牛商品券が配られるかもって話があったよな。あれって一体なんだったのだろうとか。Go To トラベルってあったね、など。その時々の時代のムードや、自分が考えていたこと、親や友人など身近な人たちの様子も思い出されてきて。こうやって記録することにも意味があるんだと思いました」 社会が激変し続けていた時期のエッセイだったからこそ、書く際に気をつけていたこともあったそう。 「思い詰めた内容は読者の方も求めてらっしゃらないでしょうし、ハジけた文章も違和感がありますしね。日常生活を記録するうえでの、暗すぎず明るすぎずのバランス感覚、みたいなものは意識していました」 エッセイでは、しをんさん流の暮らしぶりも読みどころのひとつ。実は高校時代から観葉植物が大好きで、今も自宅にはいくつもの鉢植えがあるのだとか。大切な存在とともに過ごす毎日は、とても楽しそう! 「10年ぐらい前にパキラをいただいた際に、そのきれいな枝ぶりに感動したんですね。ところが今や“あのシルエットはどこへ?”というぐらい、野放図な姿に(笑)。パキラは室内にいるので、『もしかしてコイツも少しは刺激が欲しいんじゃないのか?』と思い、たまに自分から軽くぶつかったりしています。私自身が風になったイメージで鉢植えに近づき、枝をパサパサ~って揺らしてみたりとか……。それなりに気遣いをしているにもかかわらず、今日もパキラをはじめとする植物たちは奔放に枝を伸ばし続けていて。でも何だか、その自由さが愛おしいんです。私の日々がリア充か?と聞かれたら、さて、どうかな……という気もしますが(笑)、楽しく暮らしています」 とはいえ、デビューから25年近くコンスタントに作品を執筆し続ける生活。「忙しいときは30時間以上、寝られないときもある」とか。 「本当は1日11時間は寝たいし、それも好きなときに起きて、好きなときに寝たいので、締め切り前は本当に疲れます(笑)。終わった後はすぐに寝つけないので、大好きな漫画を読んで脳をクールダウン。特にハーレクインコミックスは、おすすめです! 時代の流れを汲み取りつつ、いい意味でベタな展開の作品が多く、心が休まるんですよ。というのも、私たち大人って、慌ただしい時間が多すぎませんか? また、世間や周囲の目を気にしたり、空気を読みすぎたりしているような時代の雰囲気も感じます。 今回、エッセイのタイトルにある“しんがり”は、最後尾という意味。そんな重要な立ち位置をまかされたとしても、時には寝てしまう胆力があってもいいのかな、と。あまり肩ひじを張らず、リラックスして日々を過ごそうではないか……。そんな気持ちもこめています」