アイコム、爆発の無線機は同社出荷か確認できず-10年前に終売の型番
(ブルームバーグ): 無線通信機器大手のアイコムは19日、レバノンで爆発した親イラン民兵組織ヒズボラの通信機器が同社製品ではないかとの報道について、「IC-V82」モデルは約10年前に終売しており、それ以降同社からの出荷はないことから、当社が出荷した製品かどうか確認できないとの声明を発表した。
同社発表によると、海外向け製品は正規代理店だけに販売されている。出荷についても経済産業省が定める安全保障貿易管理の規定に基づくプログラムを策定したうえで、厳格に輸出管理しているという。一方、すべての無線機は和歌山県にある子会社で厳格な管理体制の下で生産されており、海外では生産していないとしている。
同社のウェブサイトでは、正規品と偽造品を見分ける方法を紹介している。ホログラムシールが無い場合やホログラムシールの絵柄が変わらない場合は偽造品の可能性があるという。アイコムは声明で、報道されている無線機についてホログラムシールが貼付されておらず、同社が出荷した製品か確認できないとしていた。また同社は模倣品が出回ることがあり、IC-V82の場合はほぼ全てが偽物の為、新しいモデルを買うべきと推奨していた。
レバノンでは、ヒズボラが使用するポケベルやトランシーバーなどの通信機器が相次ぎ爆発し、多数の死傷者を出した。ロイターは、18日に爆発したトランシーバーの画像にアイコムと日本製を示すラベルが写っており、IC-V82モデルではないかと報道していた。17日に爆発したポケベルには、台湾企業ゴールド・アポロのブランド名が記載されていたが、同社は設計や製造には一切関与していないと説明していた。
企業の自己防衛も
身近な通信機器が武器に変わったことで、世界中に不安が広がっている。また企業にとって、自社製品が知らないうちに転売されたり、悪用されたりするリスクを再認識させる出来事にもなった。
供給網(サプライチェーン)の管理強化の必要性を指摘する声も一部識者からは挙がる。日本大学危機管理学部の福田充教授は、今回のテロはサプライチェーンの過程で爆発物を仕込まれた可能性がある新しいテロの形だと指摘。各企業が自己防衛するためには、自社の製品の安全性について、流通から納品の先までサプライチェーンの危機管理を負うといった対応を今後迫られる可能性があると述べた。