経営危機の日産に噂される「ホンダとの提携強化」、求められる“復興計画”の策定と日産らしさを取り戻す必須条件
■ 日産が北米市場で失速した最大の理由はHEVの有無ではない 技術的にも大きな問題はない。経営のゴタゴタや経営戦略の問題で日産の技術力を疑問視する向きも多いが、技報を見る限りバッテリー、半導体、内燃機関、AI(人工知能)など、次世代で勝負をかけるのに必要とされる技術群についてはかなり分厚いものを持っている。 世界の自動車業界の中でリーディング側に立つに十分な規模の研究開発投資をリーマンショック、ゴーンショック、コロナ禍といった逆風の時も含めて絶やさず行ってきた成果であろう。 問題は冒頭で書いたように、特に北米市場でクルマが思うように売れなかったことに尽きる。その理由について内田誠社長が「お客さまのニーズに応えるクルマをタイムリーに投入できていなかった」としつつ、その一端として北米市場にハイブリッドカー(HEV)を投入できていなかったことを挙げたことから、日産はHEVがなかったために販売不振に陥ったと評する向きが多くみられる。 だが、現時点ではHEVがあれば追い風にはなるものの、それがなかったからといって致命的な減速要因にはならない。今年度4~9月の北米乗用車市場におけるHEVの販売比率は9%強で、需要が停滞しているとされるバッテリー式電気自動車(BEV)の7%台より少し多いくらい。それもHEVの世界トップランナーであるトヨタ自動車が主要モデルである「カムリ」を全数HEVにするなど一部のメーカーが強力にけん引しての数字だ。 そのトヨタとて、ピックアップトラック「タコマ」を2023年にフルチェンジした際、ピックアップトラックとしては珍しく強力なハイブリッドシステムを搭載するグレードを設けたものの、販売増に思うように結びつかないという状況である。反対に非HEVでも順調に売れているモデルも多数ある。 実は内田社長も決算の説明でコロナ後の2021年、22年ごろはそもそも自動車市場全体が供給不足でインセンティブを抑制してもクルマが売れたが、供給が正常化したときに競争力がないことが明らかになったと、販売戦線が一気に悪化した要因を述べている。 その説明がHEVかBEVかといった分かりやすい構図に持っていきたいメディアに受けず、HEVがないことがクローズアップされることになったが、日産が失速した最大の理由はHEVの有無といったパワートレインの種別の問題ではなく、そもそも作るクルマがユーザーの人気を獲得できなかったことなのだ。