売れない商品をスピード現金化~「全部買い取ります」驚きの仕組み
「電気が止められてつかない。お湯をひねっても出ないので、真冬に水を浴び、シャンプーも買えないので洗顔で髪を洗うみたいな……」(川口) そんなどん底生活を送る中で、転機が訪れる。 2016年、LED電球の飛び込み営業で地元のスポーツ店を訪ねた吉岡。そこには10年以上前のものと思われるグローブが半額で並んでいた。聞くと、「これが売れないから新品を仕入れられない」と言う。 吉岡はひらめいた。すぐさま銀行に走って30万円をおろすと、古い型のグローブ、全てを買い取った。そしてインターネットで、二日で売り切ったのだ。 「買い取った時のオーナーさんのうれしそうな表情。10年、20年と溜まっていた在庫を一瞬ではけることができた。しかも売り上げを次の商品の仕入れに回すことができて非常に喜んでもらえた」(吉岡) この「在庫一括買い取り」に商機を見出した吉岡と川口は、中古のワゴン車を購入した。 全国のスポーツ店を回り、少しずつ買い取り先を増やしていった。 野球用品の買い取り事業が軌道に乗った頃、吉岡は、どのスポーツ店もグローブよりスポーツウエアの在庫を大量に抱えていることに気づく。 「アパレル業界がどうなっているかを調べた時に、とんでもない量の服が廃棄されているのを知りました。アパレル業界の商品を販売できるようになったら、チャンスはあるんじゃないかと」(吉岡) ただし、アパレルメーカーを相手にするとなると買い取り金額は一気にはね上がる。そこで吉岡は2019年、順調だった野球用品の事業を顧客情報や査定データなどとセットで売却。そのお金でアパレルの買い取りを本格化させていく。 さらに「自分が買いたい物」ではなく「客が売りたい商品」を一括で買い取ることで、年間取扱高を557億円まで引き上げた。 「代打って、チャンスの場面で出てくることが多いと思うんです。チャンスの場面でお客様に貢献し、結果を出せるような企業になっていきたい」(吉岡)