小西真奈「Wherever」に見る、画家のタッチの変遷
雄大な自然を題材に、大画面の隅々まで描き込んだ理知的な絵画スタイルが評価され、2006年VOCA展で大賞を受賞した小西真奈。近年は即興的な筆運びで身近な題材を描くように、スタイルを固定することなく風景画の可能性を拡張し続ける。 府中市美術館 で開催中の小西真奈「Wherever」は、キャリア初期の代表作から最新作までおよそ100点の絵画作品が並ぶ作家にとって最大規模の個展だ(会期は2025年2月24日まで)。 「小西さんから大型作品2点を寄贈したいとの申し出を受け、アトリエに調査に伺ったことがきっかけになりました」と、担当学芸員の神山亮子は開催までの経緯を話す。初期の緻密に描き込んだ作品から、即興的で余白を感じさせる作風へと変化したことが見て取れ、またその近作に魅力を感じたことから個展を依頼したという。 そして、美術館で初となる大規模な個展を開催することを決めた小西。「この規模の空間で成立させられるか不安で、『作品が足りない!』となって目覚めるような悪夢をよく見ました」と、神山の依頼を受けた当初のことを笑いながら話す。 「お話をいただいたのは2年前のことですが、神山さんには本当に伴走していただけたと感じています。徐々に描く楽しみが戻ってきて、会場に入ってからの設営も、空間に新たに絵を描くような感覚で楽しむことができました」。
文・撮影=中島良平