「小説は論文と似ていると思っています」小説を通して提示される大胆な結論……「衝撃」を与えるには「秘訣」があった
「面白そうだ!」と飛びつきたくなる直感を信じる
──ちなみに講談社タイガから刊行されている『バビロン』の最新刊は……。 実は『バビロン』の続きを書くための資料を探していたときにシャルダンの著作と出会いまして、大きく横道に逸れてしまっていました……。ただ、『バビロン』を忘れたことは一時もありません。アニメ化の際にヒロイン・曲世愛のサンダルをグッズとしてつくってもらったので、毎日家のベランダに出るときにそのサンダルを履いています。このあいだ洗濯物を干しているときに鼻緒が切れてしまって、なにか悪いことが起こるんじゃないかと怯え、その後二足目の曲世愛サンダルを下ろして使っています。自宅に大量の『バビロン』グッズがあり、『バビロン』と共に毎日を生きています。 ──それはもう、続きを書くしかないのでは(笑)。「『バビロン』を忘れたことはない」。その言葉を聞いて、安心する読者も多そうです。 『バビロン』は内容を広げやすい題材なので、なにを書こうか迷ってしまっているところはあります。そもそも完結まであと何巻かかるんでしょう……。 ──『バビロン』とは別に、次に書きたい題材はありますか? 『小説』を書き終えたあとの余韻がまだ残っていて、新しい題材となるとまた探す必要がありそうです。面白そうだと直感したものに飛びついているので、きっかけがやってくるまでは何年でも待つつもりです。 ──今回の『小説』だと、シャルダンとの出会いですね。 天啓が降りてくるのが先か、貯金がなくなるのが先か。これからも生活を続けられるよう、仕事をしていきたいです。 (二〇二四年八月 オンラインにて) 野﨑まど『小説』 五歳で読んだ『走れメロス』をきっかけに、内海集司の人生は小説にささげられることになった。 一二歳になると、内海集司は小説の魅力を共有できる生涯の友・外崎真と出会い、二人は小説家が住んでいるというモジャ屋敷に潜り込む。 そこでは好きなだけ本を読んでいても怒られることはなく、小説家・髭先生は二人の小説世界をさらに豊かにしていく。 しかし、その屋敷にはある秘密があった。
あわい ゆき(書評家・ライター)