「小説は論文と似ていると思っています」小説を通して提示される大胆な結論……「衝撃」を与えるには「秘訣」があった
『[映]アムリタ』から『小説』へ、ますます深みを増す野﨑まどの世界!
──デビュー作の『[映]アムリタ』から『2』までは「なぜ創るのか」に重きを置いており、「なぜ読むのか」を描いた『小説』とは対でありつつ、テーマが重なっている印象も受けました。 以前に「創作について」をテーマに書いたときは、これが答えだと確信を持って言えるような地点に到達できていなかった歯痒さがありました。今回改めて書いてみて、当時よりは先の地点まで書き進められたのではないでしょうか。ただ、完全解答ではないという気もしているので、この先も書きながら探っていきたいです。 ──デビューからの十五年間で、創作に対するご自身の価値観が変化した実感はありますか。 変化……というよりは、読んだものが「溜まっていった」感覚に近いですね。本を読んでいくと知識は蓄積されていくので、勉強したぶん前に進めてはいるのではないかなと思います。 ──『小説』では改行が極端に少なく抑えられていたり、視点が混在していたりと、文体もこれまでの作品とは大きく変わっていましたね。 今回小説について書くにあたって、自分の中から自然に出てくるものをなるべく活かしたいと思っていました。ふだん小説を読んでいると、句読点に対してまどろっこしさを抱いたり、改行も必要ないと感じることがよくあります。それらをなくしても読めるようであれば、なくしてしまってもいいのかなという気持ちで書いていきました。地の文も、普通は一人称視点なり三人称視点なりに統一して書かれることが多いですが、今回は内海の一人称視点、外崎の一人称視点、三人称視点(神の視点)などが混在しています。おそらく刊行前に校閲の方からご指摘をいただくとは思うのですが、これが自分の心の中に一番近い書き方だと思っているので、あえて崩したままにしておく箇所は多くなりそうです。『小説』というタイトルではありますが、小説の作法的なものにあてはめることはあまりしたくないなぁと思っていました。 ──前作の『タイタン』が二〇二〇年刊行なので、『小説』は実に四年ぶりの新刊になりますね。新刊を待ち望んでいたファンの方も大勢いらっしゃるかと思いますが、構想から書き上げるまでの期間はどのくらいだったのでしょう? 内容の着想自体はシャルダンの著作を初めて読んだ四年前から育んできましたが、本文の執筆自体はおおよそ二ヵ月です。好きでいてくださっている読者の方々にはお待たせして申し訳ない気持ち、見放されていても仕方ない気持ち、読んでいただけたらたいへんうれしい気持ち……そしてこれからも謝罪し続けていきたい気持ちでいっぱいです。