「小説は論文と似ていると思っています」小説を通して提示される大胆な結論……「衝撃」を与えるには「秘訣」があった
「読む」とは何か。小説の存在意義とは。 鬼才・野﨑まどさんによる4年ぶりの最新長編『小説』には、その答えがすべて詰まっている――。 【写真】「なぜ小説を読むのか」を暴く衝撃作 今回は謎に包まれている野﨑まどさんにインタビューを敢行。 後編では、この物語が生まれたきっかけと過程を野﨑さんに改めて振り返っていただきました。 【前編】小説のタイトルが『小説』……前代未聞の「野﨑まど」ワールドは、「宇宙」「妖精の国」「アイルランド」となんでもアリ!? はこちら!
大胆なテーマを結論に導くための「秘訣」
──小説とは何か、私たちは何のために小説を読むのか──。物語の最後でそれらの「答え」が提示されるわけですが、作品のテーマとなる「問い」とそれに対する「答え」は、どのように見つけているのでしょうか。 まず最初に話のプロットを立てて、テーマの答えも自分なりに仮定してから書き始めます。ただ、先人の知識や論を咀嚼しながら書き進めていくうちに自分が想定していた答えが誤りだったように思えてくることもあります。そうなると書き直すしかなくなるので、最初に想像していた通りに書けるとは限りません。今回、小説はすごいもののように結論づいた印象があるので、自分の好きなものがすごいとわかってうれしいです。 ──「死とは何か」を論じた『know』、「仕事とは何か」を解いた『タイタン』をはじめ、野﨑さんの小説はひとつの大きなテーマを提示したうえで、だれも考えていなかった結論に導いてくれます。こうした問いの結論はともすれば「人それぞれ」と読者に委ねてしまうこともできそうですが、野﨑さんの作品はたった一つの答えを、説得力を持って提示してくれるところが大胆で魅力的に感じます。読者を虜にする大胆な結論は、どこからうまれてくるのでしょうか? 大胆な発想をしている自覚はなく、必然的にうまれているようなところがあります。たとえば『小説』で論じた「小説を書く意味・読む意味とは何か」に対する答えを探すとき、「小説は宇宙と関係があるかどうか」を考えました。調べものをして宇宙、生物学、進化論……と様々な情報を総合していくうちに、どうやら宇宙とも関係があるようだとわかって楽しかったです。 ──小説を書くために、分野を問わず多方面から知識を集めていらっしゃるのですね。 科学的な考証については間違いがないように突き詰めたいと思っているものの、いかんせん素人仕事ですから、専門の学者さんに認められるほどまで完璧に仕立てるのは難しいと思っています。それでも読んでいただいたときに噓を書いていないようにはしたいので、啓蒙書や参考書を一通り読んでから書こうとは意識しています。逆に道を突き詰めようとしてしまうと小説を書くよりも調べるほうが面白くなってしまうので、必要なぶんだけ調べたら切り上げようとは思っているのですが。どうしても切り上げられないときは資料を読みながら本文を書くようにしています。