新型フェラーリ プロサングエに日本で乗った!!! 4760万円のスーパーSUVの実力とは
日本に上陸したフェラーリの新型「プロサングエ」に、小川フミオが乗った! ブランド初となるSUVの実力はいかに!? 【写真を見る】新型プロサングエの日本仕様の内外装など(79枚)驚くほど実用性の高いインテリアに迫る!
買えれば、もっと幸せ
4ドアのフェラーリが欲しい、というオーナーからの声に応えて……それこそ、フェラーリがプロサングエを開発した理由である、と、聞いたことがある。もしそういう要望を持っていて、しかもこのクルマを手に入れられたとしたら、最高に幸福だろう。2024年5月に東京都心部の路上で乗って、つくづくそう感じた。 ファミリーどころか、リヤにVIPを乗せてもまったく問題ない、ひろびろとした空間をもつプロサングエ。「ボディ剛性のために開口部は出来るだけ小さく抑えたいが、乗降性を犠牲にしたくないので、必然的にこうなりました」と、かつて開発者から説明をうけた観音開きのドアをもつ。 試乗車の室内はブラックのちょっとハードめな仕様だったけれど、素材や色など好みの仕様に仕立てられるパーソナライゼーションプログラムを使って、たとえば明るい色調で仕立てると、かなり雰囲気が変わるだろう。 私は、これまでイタリアはドロミテの山岳路や、ニュージーランドのカントリーロードなど、いろいろな状況下で、プロサングエをドライブしてきたが、自分が住んでいる街、東京では初めて。「乗らないでもわかるのでは?」と、言われたけれど、乗ってみてよかった。 プロサングエ、とにかく活発だ。12気筒エンジンの太いトルクを使っての加速感はほかのものでは替えがたい。騒音規制のため、エンジン音も排気音も低く抑えられているのだけれど、それでもイイ音だ。ボリュームをしぼってもいい演奏家の奏でる調べが魅力的なのとおなじだろう。 操縦を楽しめるのは、正確なステアリングと、上手なロール制御によるハンドリングによるところも大きい。車幅は2mを超えるけれど、高速道路でも街中でもボディをもてあますことがなかった。これにもあらためて感心した。 電子制御サスペンションを使う足まわりの動きはしなやかで、先にも触れたとおり、リムジンとしても十分使えるほど。いっぽう、ドライバーがその気になれば、目をみはるようなペースで走ることもできる。小さくない車体だが、身のこなしは身軽なスポーツカー並だ。 533kWの最高出力を7750rpmで発生するという6496ccV型12気筒エンジンは、いまどき貴重なノンターボの自然吸気タイプ。おかげで、段付きの加速などなく、回転計の張りが8000rpmあたりからのレッドゾーンに達するまで、まことにスムーズな加速感を味わわせてくれる。これもみごとだ。 フェラーリは、2024年5月にやはり6.5リッターV12エンジンを搭載したGT「ドーディチ・チリンドリ」を発表した。このとき会場でエンジニアリングのトップ、ジャンマリア・フルゼンツィは、「いまの12気筒はユーロ6eの規制をパスしているので、少なくとも2026年までは新車に搭載して販売できます」と、教えてくれた。 悲観的にみるなら、この芸術的にキモチのよいエンジンを新車で買えるにはあと2年しかないわけだけれど、楽観的には、「V12はそう簡単にあきらめません」と、話すフェラーリのことだから、別のカタチで快楽的なパワーユニットを用意してくれるんじゃないかと思っている。 ゆたかな三次元曲面のパネルで構成されたボディといい、5.0mを切る全長に抑えた効率的なパッケージといい、演出効果と機能性をともに満足させる観音開きのドア(「フリーダムドア」とフェラーリでは命名)といい、日常のなかで、オーナーの自尊心をくすぐってくれるような内容がたくさんある。 自分の身体のように走れるプロサングエとは、わずかな時間しか乗れなかったとしても、手放すときに絶対さびしい気分になる。それほどよく出来たクルマだ。だからフェラーリはずっと、私たちクルマ好きを魅了してきたんだと思う。乗っていれば幸福。買えれば、もっと幸せだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)