佐々木朗希、全国区12球デビューの衝撃と波紋
Uー18W杯に出場する高校日本代表対大学日本代表の壮行試合が26日、神宮球場で行われ、プロ注目の右腕、佐々木朗希(大船渡高3年)が先発した。1イニング、12球だけだったが、スカウトのスピードガンでは最速158キロをマーク、打者3人から2三振を奪い、大学日本代表を率いる生田勉監督が「度肝を抜かれた」と発言するほどの衝撃を与えた。“佐々木ショック”は、同じくドラフト1位候補、森下暢仁(明治大4年)のピッチングにまで影響を与え5-5の引き分けにするのが精一杯だった。ネット裏には、各球団の編成トップ、スカウトら100人以上が大集合。中には「将来、170キロを投げるのでは?」と語るスカウトまでいて、楽天の石井一久GMが「悩むが、指名しないと東北のファンに怒られちゃう」と発言するなど、佐々木の衝撃の波紋は大きく広がっていた。
スカウトのスピガンは「158キロ」を表示
あの佐々木の全国区デビューに神宮球場が2万8436人ものファンで埋まった。先発抜擢した永田裕治監督が、「大観衆の中で投げてみることがこれからの大会に向けても将来的にも役立つと考え先発をやってもらった」と狙いを明かす。日の丸を背負い、しかも、相手は、ドラフト候補がズラっと並ぶ大学日本代表である。 「今まで背負ったのは、高校とかの小さい規模。日本を背負って重いものを感じます」 佐々木はプレッシャーを感じていた。 だが、それが彼の持ち得る才能を狂わせることはなかった。むしろ逆。そういう環境を力に変える。 190センチの長身から左足を胸につくほど高く上げる美しいフォームから投じた初球は152キロのストレートだった。 「甘いというほど甘くないが、コース的に真ん中よりでした」 ややシュート気味に動いた、その佐々木が反省したボールを左打者の宇草孔基(法大4年)にレフトへ流し打たれた。だが、猛チャージをかけた急造レフトの遠藤が頭から突っ込んで好捕。ボールがこぼれ、すでに走者は二塁に到達していたが、完全捕球後と判断され、佐々木は、このファインプレーに救われた。 その時、佐々木は、こう思ったという。 「スピードボールにしっかり対応してくる。やっぱり甘く入ったら、いくら球威があってもスタンドだったりヒットゾーンに持っていかれるのでしっかりとコントロールを意識しなきゃと思いました」 たった1球で修正するのだから非凡だ。 初体験となる国際球、神宮のマウンドにも「硬いという部分では、普通のマウンドと違うと思いましたが、特に気になることはなかった」と適応力の高さを見せた。 続く小川龍成(国学院大3年)へも150キロ台のストレートで押す。セーブしてこれだ。3球目に空を切らせた高めのボールに「156キロ」が表示された。 「おお!」。神宮がどよめきに包まれた。 西武、ロッテのスピードガンは、「158キロ」を示していた。ウイニングショットはフォーク。挟みが浅く、まるで縦のスライダーのように少し高めに浮いてから落ちた。小川のバットはクルリと回った。 3人目は、柳町達(慶応大4年)。通算100安打を記録している東京6大学を代表するヒットメーカー。155キロのストレートでストライクを取って入ると、サインにクビを振ったフォークでカウントを整え、フルカウントになったが、最後、アウトローに152キロのストレートを投げ込むと、慶応の主軸がついていけない。ボールの下を振っての空振りの三振である。このボール。試合後、佐々木が「今日一番良かったボール」と、振り返ったベストショットである。 佐々木は、1イニング、わずか12球でマウンドを降りた。 「木のバットですが、すごく鋭いスイングをしていて、圧力というか、雰囲気が凄かったです」と、佐々木は、大学生にそういうものを感じたというが、その衝撃の12球は、大学代表ベンチに動揺を与えた。 生田監督が言う。 「佐々木君のボールには度肝を抜かれた。日米野球の時にも(米国に)素晴らしいピッチャーがいましたが、それ以上のボールを投げていた。ビックリしてチームが動揺した」