佐々木朗希、全国区12球デビューの衝撃と波紋
中日のドラフト戦略としては、「ビッグ4と呼ばれる奥川恭伸君(星稜)は、勝つ執念のある投手。こういう勝つ、貯金を作れるピッチャーはプロでは貴重。西純矢君(創志学園)も県大会から見ているが、精神面に成長が見られる。及川雅貴君(横浜高)もポテンシャルははかりしれない。正直、悩みます。与田監督の考えも含め球団で議論を深める必要があります。編成会議は長時間でしょう(笑)」と言う。 楽天の石井GMも佐々木にインパクトを受けて悩んでいた一人。 「いい真っすぐに、腕を振れる変化球も持っている。即戦力に近い未完の大器だと思う。ただ、体は高校生なんで、すぐに140何試合も投げる体力があるかわからないが、プロの中に入ってもトップレベルに育つことは間違いない」 地元東北の選手だけに1位指名を公言してもよさそうだが、「どうしたらいいですか?」と記者団に逆質問。 「ステージが上がれば、上がるだけのポテンシャルを見せる。スカウトはみんな、今すぐ(1位指名を)決めていい、欲しい、と言った。迷います。(クジで)外れたら嫌だしね。何十年に一人の逸材だが、チームのプランに合うかどうか。現状、先発の頭数が揃っているわけじゃないので、即戦力が欲しいと思っているし、逃してはいけない選手もいる。そこが悩むところ」 石井GMは、陽動作戦なのか、「彼にデメリットが多いのであれば野手も取りたい。各球団が行けば、(ドラフト)戦術的にいい野手を取れる確率が高い」とも口にした。さらに「高校ビッグ3でなく、アマチュアビッグ3」として、佐々木、奥川、森下の名前を挙げた。 「佐々木君は、日本の宝。東北で投げてくれるのをみんなが望むところ。指名しなかったら、僕が東北の人に怒られちゃう」 石井GMは、そう言って苦笑いしたが、それも本音だろう。
衝撃の全国区デビューを果たした佐々木は、試合後、公式会見、囲み会見と2度メディアに囲まれた。 「歓声だったり、声援がたくさんあって力になりました。(これまで)大勢の中で投げることがなかったのですが、楽しみながら投げることができました。三者凡退で抑えられてよかったなあと思います。最速156キロ? 出たことはいいと思いますが、コントロールできる球ならもっといいかなと思います。コントロール? 2ストライクから、しっかりと投げることができたので、良かったほうかなと思います」 表情は変えず声は小さい。 岩手大会の決勝での登板避問題が大きな波紋を広げ、その渦中に巻き込まれた17歳が、慎重に言葉を選んでいるようにも見えた。 先発を命じられた永田監督からは、“大舞台に慣れろ、殻をここで打ち破っておけ!”というような話をされていたとも言う。 「凄く色々な思いがあって(先発に)選んでくれたと思うので。その期待に応えることができて良かったです。その中で投げ切れたのは凄く良かったと思います」 同時にたった12球を冷静に分析している佐々木もいた。 「対策をされなかったから、しっかりと打ち取ることができました。ひとまわり目なので、初対決だと、ピッチャーが有利だと思うので満足することなくいきたいです」 対戦した3人がすべて左打者だったことから「右バッターに投げていません。右バッターに対する投球、走者を背負った投球とかを確認してやっていきたいです」とも言う。 明日、U18W杯が行われる決戦の地、韓国へと旅立つ。 「個人的にもチーム的にも大会が近づくにつれ、いい仕上がりになっていると思うので、頑張っていきたいです。選んでいただき、日の丸を背負っている以上、しっかりと自分の持っているものを出し切って、世界一へ貢献したいと思っています」 佐々木の衝撃の第二章は、国際舞台に移ることになる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)