今季3度目の電撃監督交代で神戸の何がどう変わった?大迫勇也のアディショナルタイム弾で最下位脱出
明治安田生命J1リーグ第20節の8試合が6日に行われ、ヴィッセル神戸が清水エスパルスとの“裏天王山”を2-1で制し、今シーズン初の連勝をマークして最下位を脱出した。ホームのノエビアスタジアム神戸に17位の清水を迎えた神戸は、同点で突入した後半アディショナルタイムにFW大迫勇也(32)が劇的な決勝ゴールを叩き込んだ。今シーズン4人目の指揮官、吉田孝行監督(45)の就任からちょうど1週間。低迷してきたチームに生まれた変化を追った。
ボールポゼッション志向に変化
ベンチ前のテクニカルエリアで後半アディショナルタイムの攻防を見つめていた、神戸の吉田監督の脳裏にはネガティブな思いが駆け巡りはじめていた。 「いやぁ、同点も覚悟していたんですけど」 試合後の第一声。本来ならば「引き分けも」と言うべき箇所で思わず間違えてしまうほど、目の前で決まった決勝ゴールは豪快であり、劇的だった。 清水ゴール前の混戦からFW武藤嘉紀(29)がシュートを放つも、DF原輝綺(23)にブロックされた。しかし、こぼれ球をDF片山瑛一(30)もクリアし損ねる。ふわりと浮いたボールに巧みに間合いをつめたのは、途中出場していた大迫だった。 しかし、ペナルティーエリア内の左側へ侵入していた背番号「10」は、清水ゴールとは反対側を向いた体勢だった。ただ、大迫は自らの背中越しにすべてを把握していた。試合後の取材エリア。短い言葉にすべての思いを凝縮させた。 「シュートしか考えていなかったので、はい。入ってよかったです」 体を時計回りに反転させながら、ボールの落ち際に合わせて左足を鋭く振り抜く。虚を突かれたのか。ゴール右隅に突き刺さった強烈なボレーシュートの前に、日本代表で何度も共闘してきた清水の守護神、権田修一(33)は反応できなかった。 キックオフ前の時点で、17位の清水と最下位18位の神戸との勝ち点差が3ポイント。得失点差はともにマイナス9。自動的に勝者が17位に、敗者が最下位となる“裏天王山”を制した神戸が、5月21日からあえいできた最下位を抜け出した。 さかのぼればちょうど1週間前の6月29日に、神戸は今シーズンだけで3回目となる指揮官交代に踏み切ってサッカー界を騒然とさせた。就任から3ヵ月もたたないうちに、スペイン出身のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(65)を解任。強化部スタッフを務めていた吉田氏が、2017、2019シーズンの途中に続いて通算3度目の指揮を執り始めた。 しかし、吉田監督は過去2度の登板では黒星がかさんだ末に、ともにシーズン途中で解任されている。さらに今シーズンだけで4人目となる監督のもと、チームがさらに混乱すると見られていたなかで、初陣だった2日のサガン鳥栖戦に続いて白星を手にした。 言うまでもなく連勝は今シーズンで初めてとなる。開幕から不振が続いてきた神戸の何が変わったのか。 大迫は「チーム全体に自信がつく勝ち点3だったと思う」と振り返りながら、ボールポゼッションが志向されてきた攻撃に加わった変化をあげた。 「サッカーは何本パスをつないでも、やっぱり点を取らなければいけない。ロングボールに対して僕が前で競り勝てばチャンスになる回数も増えているし、そこはどちらも上手く使いながら、併用しながら戦っていけば強いチームになってくると思う」