リバティアイランド（c）SANKEI

そんなドウデュースの最大のライバルとなるのはリバティアイランドだろう。 2年前の夏、鮮烈な末脚を発揮して新潟で話題となったあどけない少女はその豪脚を武器に阪神JFを制して2歳女王の座に君臨すると、年が明けてからの牝馬クラシック路線を席巻。 その走りは3歳牝馬という狭い枠を越え「同い年の牡馬、さらには年長の馬たちとも勝負をさせてくれ！」と訴えるかのような勝ちっぷりだった。 そうしたリバティアイランドは桜花賞、オークス、秋華賞の3レースをいずれも快勝して、牝馬三冠を軽々と達成。 まるで抑圧された環境から解き放たれ、自由を求めるような走りを見せていた彼女が初めて古馬と対戦したのはジャパンC。世界最強馬と称された1つ上の牡馬、イクイノックスとの真っ向勝負を演じた。 この時はイクイノックスに届かなかったものの、堂々の2着に入りこの馬の実力が世界レベルであることを証明してみせた。 もはや国内には敵なしと言わんばかりに4歳になったリバティアイランドは今春、ドバイシーマクラシックへと遠征したが、ここでは3着に惜敗。 そこで靱帯炎を発症してしまい、春は全休するという憂き目にあった。それから7カ月ほどの期間を開けて迎える今回のレース。脚の様子は万全で追い切りも順調に消化。 圧倒的だった3歳時の走りと遜色ない動きを見せるようになってきた。秋の府中に現れるのはおよそ11カ月ぶり。あの爆発的な末脚で今度こそ牡馬を制圧し、真の女王の座に君臨するだろうか。

ドウデュース、リバティアイランドばかりに注目が集まっているが、その2頭をまとめて負かそうと目論む馬もいる。今年一番の成長株、レーベンスティールが大物喰いを狙う。 もともとはデビュー以来、馬券圏内を外さずに来ていた堅実派の馬だった。 3歳春はなかなか体調が整わず、クラシックには間に合わなかったがラジオNIKKEI賞3着から間隔を開けて臨んだセントライト記念では中団から鋭い脚を見せて快勝。 皐月賞馬ソールオリエンスに1馬身3/4という決定的な差をつけ、世代屈指の実力を証明してみせた。 その後、距離適性を考えて臨んだ香港ヴァーズで世界の壁に阻まれ8着、それ以来のレースとなった新潟大賞典では11着とやや停滞したが、新パートナーであるクリストフ・ルメールとタッグを組んで臨んだエプソムCで久々の勝利を掴む。 1年前にソールオリエンスを負かした舞台である中山芝2200mで行われたオールカマーでも好位のインコースから抜け出すという王道のレース運びで押し切り、重賞2連勝を達成。4歳秋を迎えて馬体も充実し、機は熟した。 鞍上のルメールはこの秋、秋華賞、菊花賞と目下GⅠ2連勝中で、天皇賞（秋）に至っては現在2年連続で制覇している縁起のいいレース。 勢いに乗った素質馬と最強ジョッキーのタッグが2強を打ち負かしにやってくる。 ドウデュースとリバティアイランドの2強対決となるか、それともレーベンスティールが台頭するのか、あるいは――今年の天皇賞（秋）も心が震えるような感動を競馬ファンに与えてくれることだろう。 ■文／福嶌弘