「中華圏と東北をつなぐ」 福島の魅力を発信する元芸能人社長、峯岸ちひろさん(33) 地域で輝く
平成23年の東京電力福島第1原子力発電所事故で被災し今も復興の途上にある福島県の浜通りに、横浜市から単身移住。台湾に向けて福島の魅力を発信し、福島県産品の売り込みなどを手掛ける会社を起こした。 令和3年秋、福島を応援する台湾の若者グループの通訳として初めて福島県を訪れた。「原発事故から10年以上が過ぎても残る、除染で生じた廃棄物を詰めたフレコンバッグの山が衝撃でした」。同時に「福島の役に立ちたい」との思いがわき、起業支援金を利用し会社を設立することを決めた。 大学在学中に芸能活動を始め、その後台湾へ渡りテレビなどの仕事を約4年。経営者を目指して帰国し、再出発を模索していた。 台湾で培った語学力や人脈が財産。移住先は原発事故による帰還困難区域も残る飯舘村だが、「現地から発信しないと真実は伝わらない」との信念があった。 「満員電車が苦手で、今は幸せ」と笑い、「家の窓から四季の変化が分かり、天候や時間でも景色が変わる。そこでコーヒーを飲むのが至福の時。人もやさしい」。会社は3年目。台湾企業との提携が始まり、輸出を望む福島県内の農家や企業も増えた。行政からPRの仕事も入っている。 令和7年は、台湾の大手プロダクションと組んでプロデュースする台湾の4人組「福島もも娘」を中心に活動をさらにパワーアップ、台湾で福島の風評被害の払拭を進める。「将来的には中華圏と東北6県のネットワークを作りたい」。発信は飯舘村から。「ここで夢をみるのがいいんです」と目を輝かせた。(芹沢伸生) ■みねぎし・ちひろ 平成3年生まれ。横浜市出身。早稲田大卒。日本で約2年、台湾で約4年、芸能活動を行った。令和4年10月に設立した「サクラ・シスターズ」(本社・福島県飯舘村)の社長。福島県を中心とした被災地の復興と、台湾との交流が事業の柱。