「おやつタイム」で見る王位戦第1局、持ち時間が少ない藤井七冠 VS 持ち時間を“減らしたくない”渡辺明九段
波乱の二日目、千日手からの“指し直し”へ
第1局の2日目、藤井七冠の封じ手が開封され、45手目が指され対局は再開した。2日目午前のおやつは、お互いに「葵フルーツバターサンド」。クロガネモチのはちみつに漬けた柿やアンズのドライフルーツ、愛知県産のイチジクなどを使用したバタークリームがサンドされたスイーツだ。
2日目午後のおやつは、藤井七冠が「完熟みかんジュース」、渡辺九段が「くま棋士」を選択。「くま棋士」は、名古屋をより知ってもらうために、名古屋コーチンのクレームブリュレなど、この地域の素材を詰め込んだケーキ。かわいらしいくまの顔に、駒のチョコレートがトッピングされている。 このおやつタイム以降、盤面は膠着状態へ。
午後3時44分、同一局面が4回あらわれることで成立する「千日手」となり、対局は指し直しに。「千日手」の成立時、両者の待ち時間は、藤井七冠がは50分、渡辺九段は2時間10分となっていた。 ルール上、持ち時間が1時間を切っていた場合、ちょうど1時間になるように調整される。そのため、お互いに持ち時間を10分ずつプラスし、藤井七冠が1時間、渡辺九段が2時間20分の持ち時間へと変更。先手後手を入れ替えて、30分後に“指し直し”となった。 大きな差がついた両者の“持ち時間”。この差を、渡辺九段は勝利へつなげることができるのか。
頬笑まなかった“勝利の女神”
午後4時14分、渡辺九段の先手で対局は始まった。有利な先手、さらに倍以上の持ち時間をもつ、渡辺九段が終始有利に進めていく。渡辺九段より先に持ち時間を使い切った藤井七冠は“1分将棋”へ突入、苦しい状況が続いた。 終盤、AIの形勢判断では、渡辺九段が99%勝勢に。しかし、最終盤で渡辺九段が詰みを逃してしまい、後手玉が捕まらなくなり、藤井七冠の勝勢に。詰みを逃したことを悟ったのか、渡辺九段は頭を抱えた。その後、136手で渡辺九段が投了。藤井七冠が勝勢1%から、大逆転勝利をおさめた。
対局後、「結果は幸いしましたけど、内容としては反省するところが多かったと思うので、しっかり振り返ってまた集中して第2局にのぞみたいと思います」と話した藤井七冠。渡辺九段は、「いきなり最終盤であのような展開になったので、全然読めてはいなかったんですけど、ちょっとまずいかなという変化もあった。本譜は勝ちになったと思ったんですけど、詰みがわかんなかったですね」と話し、「詰みがあったなら、詰まさないといけなかった」「ちょっと最後の詰みのところが対局中見えなかったですね」と振り返った。
藤井七冠は敗色濃厚だったこともあり、反省の表情を浮かべ、渡辺九段は勝ちの局面があったことから詰みを逃したことに悔しさを滲ませた。 おやつを対局室で食べることで、“持ち時間の使い方”にまで気をつけた渡辺九段だったが、今回は惜しくも勝利の女神は微笑まず。一方、藤井七冠は永世王位の資格獲得に一歩近づく結果となった王位戦第1局。 王位戦七番勝負の第2局は、北海道函館市で7月17日・18日に行われる。