色調を決めてワードローブを作る。
「ごめん、眼鏡だけ洗面所に忘れてきちゃった。それ以外はボクのワードローブを持ってきたよ。でもね、ボクは色を揃えているつもりはないんだ。好きなナチュラルな色調の生地をヴィンテージで選んだり、古い工場で作ったりしているだけ。色というよりは素材なんだよ」。好きなのはウール、リネン、ディアスキン。これらの素材は本来の姿をそのまま生かしたものがたしかに多い。「洋服の極致はマテリアルである」と山口瞳センセイも言っていたが、まさにそうかも。これらを眺めていると、階調は異なれど素材にこだわった茶やグレーがほとんど。でも、たまに赤。今日のパンツもエンジ色とどこかに“赤”を入れる。池波センセイも「ツイードの黒の上着に、フラノのグレーのパンツ、黒い靴。同じ無彩色だから赤いネクタイでもすれば品が出る」と言っていた。まとめるに、好きな素材を集めていたら、自然と自分に合う色が決まっていた、なんて話が肩肘張ってなくてお洒落な気がする。
冬のシャツはウール素材で、形は定番型を選ぶ。
「ボクの冬のシャツのスタンダードはウールもの。形は他の季節と変わらずに、ほとんどがレギュラーカラーのボックスシルエット。たまに丈の長いオールドタイプ。ウールは暖かいのはもちろん、冬ならではの濃いめの色を楽しめるのがいいところかな。あと、シャツを選ぶときに気にするのがボタン。必ず手に触れるところだからこそこだわるのも、シティボーイの作法でしょう(笑)」
雨除けにもなる、一生ものの分厚いウール。
「アウターは厚手のウール素材が多いですね。レザーも着ますが、ボクはナチュラルな素材が好きなので、ナイロンものは一切着ません。羽織ると肩が凝るほどどっしりとしたローデンウールのコート(右)をよく着ています。暖かくて何十年とクタらないし、ボクにとってはナイロンシェル代わりの雨除けでもある。左のコートはブランケットのように厚みのあるウールのPコート。この生地感も好きなんです」
クラシックがすぎるときは、同素材で色の遊びも入れる。
「パンツもウール素材。ちょっとヴィンテージ感のあるウールを使って織られています。同じテクスチャーをブラウンとネイビーで前と後ろに使ったこのイージーパンツは、着こなしに少しの遊び心を、って気持ちではいていますね。ボクにしては少々奇抜ですが、こういうのもたまにははきたくなるときがあるんです」