【DeNA】スポニチ独自、日本一秘話連載第5回最終回 2年目吉野初勝利、急逝の親友に届けた力投!
DeNAが98年以来26年ぶりの「日本一」を達成。3位から頂点に昇りつめた「成り上がり」のシーズンを、スポーツニッポン担当記者は1年を通し見届けた。その舞台裏にはシーズン中に明かせなかった多くの秘話がある。ここでは、独自取材の秘話を5回連載で紹介する。第5回最終回は、2年目の吉野光樹投手(26)。春季キャンプ初日に急逝した親友に届けたプロ「初勝利」秘話。(構成、スポニチDeNA担当・大木 穂高) 8月23日ヤクルト21回戦(神宮)。2年目の吉野は、5回2失点でプロ初勝利を手にした。序盤に2失点も、粘投に応え打線が援護。91球を投じてのウイニングボールだった。そしてそのとき、右腕がそっと天を見上げ初勝利を報告したことを知る者は少ない。 天国では「親友」がその瞬間を待っていた。九州学院で苦楽をともにした同学年。3年間クラスが一緒で、席も常に隣だった。吉野は静かに言う。「今年2月1日に急性の心不全で亡くなったんです。部活は違うけど凄い頑張っているヤツで、部活の垣根を越えて本当に仲良くしていました」。 2月1日は2軍鹿児島・奄美大島キャンプ初日。新人年の昨年を腰痛で棒に振った吉野にとって重要なもの。その勝負の年の初日に突然の悲報を耳にした。それでも一年の幕開けのとき、故郷・熊本にお別れにかけつけることはできなかった。 「お互いに冗談を言い合ったりして、めちゃくちゃ元気なヤツが急にいなくなった。いつだって一緒だった。信じられなくて本当にショックで…」。悲報を受け心に誓ったことは1つ。「天国に向け自分の初勝利の報告を一日でも早くしたい」だ。 神宮でその思いを遂げた。東京の夜空に顔を向ける。「勝ったぞ!天国から応援してくれてありがとう。これからもずっと一緒だ」。 8月23日。忘れられない一日となった。「オフに熊本に戻り彼に会いにいきます。しっかりと報告します」。その後、背番号24は26年ぶり日本一に貢献する熱投を続けた。7試合3勝2敗。天国に届ける土産話は盛りだくさんだ。 秋季トレーニングを終えたら熊本に戻る。3つのウイニングボールの1つを墓前に添えるつもり。そのとき、吉野の「天国に誓った」2年目のシーズンがようやく幕を閉じる。(第5回最終回終了)