中学数学なら「知っているはず」だけど、改めて問われると即答できない「1≦1は正しいですか」…大学入試で問われる「知識の質」
東大や京大ほか、難関大学が出題した入試問題には、「数学の本質」がいっぱい詰まっている! 【画像…知識のレベルを問う】「中学数学で大学入試を解く」のに「本当に必要」な知識 「よりすぐりの良問」を格好の素材として活用する新しい学習法を紹介した『中学数学で解く大学入試問題』が話題になっています。 中学数学の限られた知識や技術で、大学入試問題がなぜ解けるのか? どう解くのか? 思考過程を重視した素朴な解法を通して、有名大学の問題が「わかる喜び」「考える楽しさ」を体感すれば、「数学的思考力」が驚くほど身につく! *本記事は、『中学数学で解く大学入試問題 数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
意外に奥深い「不等号」の性質
読者のみなさんの年代によっては、中学校で不等式を十分に学習していない方もおられますので、その性質についてここで簡単に説明しておきます。 2数a 、b において、a a+c その2数からcを引いても、大小関係は変化しないので、 a-c その2数に正の数cをかけても大小関係は変化しないので、 ac 正の数cで割るということは、その逆数である正の数1/cをかけるということなので、正の数での割り算も、かけ算と同様になります。
負の数で、様子がガラリと変わる
しかし、1 1 ↓×(- 2) -2>-6 となって、大小関係が変わります。負の数cをかけたとき、あるいは負の数cで割ったときには不等号の向きが変わります。 ac>bc ここまでをまとめると、次のようになります。 a a±cc>0のとき accbc, a/c>b/c それでは、ここで質問です。 「1≦1」は正しいでしょうか?
実際の大学入試でも出題された!
わざわざこのように表記することは少ないと思いますが、「1≦1」は正しいかという問いは、2つの実数a 、bについて、「a=bならば、a≦bである」は正しいといえるか、と言い換えられます。 まず、「a=bならば、a≦bである」の、「a ≦b」とは、どういうことでしょうか? a 簡単な日本語でいうと、a≦bとは「aがbより小さい、またはaとbが等しい」ということです。 a≦bについての理解を確認したところで、あらためて初めの問いの命題を言い換えると、2つの実数a、bについて、 a=b ならば、a≦bである。 ⇔2 実数a 、b について、 「a=b」ならば、「a これを簡単な日本語に言い換えると、2実数a 、bについて、「aとbが等しい」ならば、「aがbより小さい、または、aとbが等しい」となります。 この「または」がポイントです。「等しい」ならば「小さいか、等しい」のは当然なので、この「2実数a, bについて、a=bならば、a≦bであるは正しいか」という命題はもちろん「正しい」となりす。 そして、「1≦1」は正しいかという問題についても、a=1、b=1としたものなので、もちろん正しいです(「1」は、「1より小さい、または、1と等しい」ですか? と聞かれたと考えてください)。 あえてこのような質問をしたのは、不等号(、≦、≧)の意味をあいまいにではなく、詳細で正確に理解することの重要性を強調するためでした。実際、かなり以前のことではありますが、これに類似した問題が、ある国立大学の入試問題で出されたことがあります。 数学を学ぶときは、つねに「質の高い知識」を心がけましょう。 * * * 次回は、拙著『中学数学で解く大学入試問題』で“閑話重大”とうたったコラムでも扱った、「知識のレベル」というテーマを取り上げます。 中学数学で解く大学入試問題 数学的思考力が驚くほど身につく画期的学習法 有名大学の問題が「解ける喜び」「考える楽しさ」を体感しよう! 中学数学の知識・技術で大学入試問題にトライして、数学の真髄に触れる。
杉山 博宣(岐阜県立高等学校教諭)