政策より共感、すぐ投票へ──ショート動画が選挙の鍵を握るか 識者が語るSNSと選挙 #SNSの功罪
このドイツの件でも重要なのはTikTokでした。あるユーザーがいいと思うフォロワーの動画だけでなく、そのユーザーが関心をもちそうな動画がアルゴリズムでおすすめされてくる。この仕組みでまず自動的に広がる。 実際、ショート動画は政治家が掲げる政策を丁寧に話すというメディアではありません。見られるのはわずか数十秒。ですので、取り上げるのは短い言葉です。「命を守りたい」といった抽象的で感動的な内容。伝わっているのは、その人へのふわっとした共感だと思います。 利用者側もTikTokで詳細な政治報道を探しているわけではないでしょう。スマホを開いて娯楽の一つ、消費行動の一つとして、ゆるくショート動画を見る。しかし、何気なく見ているうちに、多く目についた投稿、つまり政治家、候補者のファンになっていく。コンテンツ消費における“推し活”のような構造になっているのだと思います。 本来、選挙は政策で投票するはずですが、ショート動画の世界ではまったく違う論理で、動いていく。インフルエンサーになるのも、Twitter上で大きな声を上げる人たちではなく、表に出てこない切り抜き職人たちです。今回の総選挙でどのような動きや影響があるのか、注視していきたいと思っています。 森健(もり・けん) ジャーナリスト、専修大学非常勤講師。1968年、東京都生まれ。『「つなみ」の子どもたち』で2012年に第43回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『小倉昌男 祈りと経営』で2015年に第22回小学館ノンフィクション大賞、2017年に第48回大宅壮一ノンフィクション賞、ビジネス書大賞2017審査員特別賞受賞。2023年、「安倍元首相暗殺と統一教会」で第84回文藝春秋読者賞受賞。 --- 「#SNSの功罪」はYahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。SNS上での誹謗中傷が社会問題としてクローズアップされるようになっています。それに伴い、辛辣な投稿に対する対策や人々の意識も変わってきました。一方で、SNSの恩恵を受けている人たちも多くいます。私たちはどのようにSNSと付き合っていけばよいのでしょうか。さまざまな事例と共に考えます。