政策より共感、すぐ投票へ──ショート動画が選挙の鍵を握るか 識者が語るSNSと選挙 #SNSの功罪
伊藤昌亮・成蹊大学教授「選挙活動のネット解禁以降の動きは」
インターネット上で選挙活動ができるように公職選挙法が改正されたのは2013年4月。当時はスマートフォンが急速に普及していく頃で、SNSでは、まずTwitter(現X)で盛り上がりました。 当時、いち早く動き出したのは左派系で、共産党は志位和夫委員長(当時)などが自らTwitterなどで発信を始めていた覚えがあります。また、市民運動勢も早くから選挙で動いていました。たとえば、緑の党で立候補した三宅洋平氏。当時は東日本大震災から2年。三宅氏は反原発を掲げて“選挙フェス”という名のもと各地で歌を歌ったりして盛り上げた。この動きを支えていたのがTwitterでした。反原発運動などの流れを受け、SNSを通じて感情を動員するというスタイルが左派の運動の中で顕著になっていきました。
一方で右派系のTwitterで当初目立ったのはいわゆるネトウヨ的な書き込みですが、その背後には組織的な動きもありました。民主党政権時代、自民党公認の「自民党ネットサポーターズクラブ」という組織が設立され、安倍晋三氏らが設立総会にも参加しました。この団体が世論工作のようなかたちで、Twitter上で民主党のネガティブキャンペーンを行っていたこともあります。感情的な盛り上がりを大事にする左派系の運動と比べると、右派系の運動はより周到なものだったと思います。 同じ頃、もう一つ出てきたのがYouTubeの流れで、N党の立花孝志氏です。彼が広く耳目を集めるようになったのは2016年の東京都知事選。このとき、立候補してNHKの政見放送で「NHKをぶっ壊す!」と言って話題になり、そこからネット戦略を強めていくことになりました。
重要なのは2014年にYouTubeが「パートナーズプログラム」を大々的に宣伝したことです。ユーチューバーが報酬を得られる仕組みは以前からあったのですが、この年、「好きなことで、生きていく」というキャッチコピーで大々的に宣伝した。あそこから再生回数を稼げばいいという人たちが大量発生していった。そこで選挙でも、極端な振る舞いと言動で再生回数を増やす候補者のエクストリーム化という流れになりました。その行き着いた先が今年の都知事選でのよくわからない候補者たちだったと思います。