政策より共感、すぐ投票へ──ショート動画が選挙の鍵を握るか 識者が語るSNSと選挙 #SNSの功罪
なぜ石丸さんの動画がそれだけ支持されたのか。その要因の一つは、彼の支持者に対するコミュニケーションスタイルではないかと思います。チャットなどと組み合わせて双方向的に語れるオンラインの場では、石丸さんは選挙のことだけでなく、音楽とかゲームとか個人的なことも多く語ります。難しい政策だけではなく、有権者と対等な目線で話してくれる感覚です。こうした“従来の政治家”と違うというスタイルが、若者や無党派層に響いたのではないかと思います。 石丸氏本人からもボランティアや支持者に「どんどん切り取って(シェア)ください」と呼びかけ、石丸氏に関する投稿を増やし「拡散」させ、世代やジャンルを超えてネット(空中戦)とリアル(地上戦)を融合させました。結果的に、この切り取り動画の拡散に成功したことによって、TikTokやYouTubeを普段見ている若年層に刺さり、既成政党への不信を背景に、若い世代を中心とする無党派層の受け皿になったのではないでしょうか。
アルゴリズムでの共感から投票へ
これまで「ネットでの人気は票にならない」というのが一般的な理解でした。しかし、今年の都知事選、そして今回の両党首選を見ると、党首選は一般の有権者が投票する選挙とは異なるとはいえ、「ネットが票に影響している」ように思えます。 SNSのアルゴリズムでリコメンドされてくる動画があり、有権者はそこに共感したら、その共感のまま選挙で投票する。そんな投票行動の傾向もうかがえます。 それは石丸さんのときだけではありません。2022年の参院選、N党候補者だったガーシーさんが当選したときは、多くの人が投票用紙を撮影し、SNS上にアップして盛り上がったことがありました。28万票以上の得票でしたが、彼が人気になったのも動画やSNSでした。昨今のショート動画はこれまでのネット選挙の成功事例の流れから来ているのだと思います。
文字よりも親近感を得やすいのが動画で、その動画も尺が短くなってショート動画になります。さらに「推し」が増えれば、そこから切り抜き動画も増え、膨大に増えていきます。そうなると、有権者は政治の要である政策の実現可能性などを理解して投票できるかどうか、なかなか難しくなっていく懸念があります。 もちろん、衆議院選挙は小選挙区が主体なので、地域の広い参院選や都知事選と異なります。各候補者は、地域に住む高齢者などあまりSNSに親しんでいない層も有権者として考えなくてはいけないので、SNSだけでうまくいくわけではないでしょう。 それでもなお、今後、選挙戦でSNSのショート動画が主体となっていくことは間違いないと思われます。ネットが投票に影響を及ぼすようになった今、候補者がどういう戦略を展開するのか、有権者はどう受け止めるのか、今後注視する必要があると思います。