政策より共感、すぐ投票へ──ショート動画が選挙の鍵を握るか 識者が語るSNSと選挙 #SNSの功罪
たとえば、高市さんのショート動画は、「早苗さん、早苗さん」とスタッフが問いかけて、「はい」と高市さんが答えて、Q&Aが始まります。「好きな音楽は何ですか」「ハードロックを聴きます」、「休日は何しますか」「バイクに乗っています」などです。こうした動画を含めて、幅広いコンテンツの多さや拡散力などが各地の支持拡大へ影響した可能性はあります。 高市さんは動画の作り方も優れていました。カメラワーク、背景の音楽、文字のデザインなど、どの部分でも計算されて作られていた。ショート動画の制作に慣れたスタッフが作っていたことがうかがえます。 報道によれば、都知事選のとき候補者だった石丸伸二さんについたスタッフ約50人が、総裁選では高市さんのスタッフに回ってSNS上の拡散に寄与したと陣営側のコメントにありました。そうしたSNSでの戦略が、今回の高市さんの躍進、存在を高めることにつながった可能性があります。
都知事選の石丸氏応援動画は約2億回再生
私たちの研究所の調べでは、前回2021年の総裁選や衆院選ではYouTubeよりTwitter(現X)かFacebookを利用していた人が多い傾向がありました。また、当時、利用する候補者がもっとも増えたのはInstagramでした。それから3年経った今年、多くの候補者がテキストから動画の利用に移行しました。その結果、動画の再生回数も増えていて、たとえば高市さんの動画は2021年当時、1日平均で14万~15万回くらいの再生でしたが、今回上げた動画は28万回再生と約2倍に増えていました。 こうした影響の先駆けになったのは、やはり都知事選での石丸さんの動画戦略とその結果としての得票数ではないかと思います。あの時期、石丸さん関連のショート動画はTikTokやYouTubeなどを埋め尽くすくらいの勢いで出回っていました。 なぜそれだけ上がってきていたのかと言えば、石丸さんを応援して、関連動画を投稿するアカウントが50以上も作成されていたことが関係しているのではないかと見ています。選挙期間中に100万回再生以上のアカウント(チャンネル)だけで少なくとも16以上ありました。私たちで調べたところ、それら応援アカウントの総視聴回数は合計2億回近くになっていました。大事なことは、石丸さんの公式アカウントより石丸さんの“推し”アカウントのほうが、再生回数が多かったということです。