社会人野球最高の舞台・東京ドーム目指す「クラブチーム」 「打倒・大企業」の情熱と組織づくりとは
社会人野球の最高峰「都市対抗野球大会」が7月19日に開幕し、熱戦が展開される。最多優勝を誇るENEOS(横浜市)に、昨年優勝のトヨタ自動車(愛知県豊田市)―。言わずと知れた大企業がしのぎを削る舞台に続く道には、中小の地元企業などが支える「クラブチーム」も名を連ねていることをご存じだろうか。野球で頂点を目指すだけでなく、地域貢献にも重きを置き、行政との連携が功を奏した事例も。野球に情熱をかける二つのクラブチームの奮闘を取材した。(共同通信=内藤界) 【写真】「世代ナンバーワン左腕」と呼ばれた元巨人の投手は、なぜ万引を繰り返したのか
▽お手製の練習場 3月中旬の平日。日が落ちた頃、山形市に隣接する山形県中山町の体育館に続々と車が集まってきた。昨年発足したクラブチーム「B―net/yamagata」の選手たちだ。 「4月の試合までにグラウンドを使えるか分からないけど、きょうも頑張りましょう」。主将の稲毛真人さん(31)が集まった選手らに声をかけ、練習が始まった。体育館に隣接するグラウンドは雪が解け始めたが、まだ使える状態になく、冬場は屋内での練習が中心だ。バスケットボールコート2個分のスペースにブルペンやバッティングケージを設けたお手製の室内練習場で汗を流した。 ▽休部からの再起 クラブ発足のきっかけは、山形市に本店を置く地方銀行「きらやか銀行」硬式野球部の休部だった。野球部は1952年の旧山形相互銀行時代に創設され、山形県唯一の企業チームとして活動。都市対抗にも3度出場した。本戦の舞台となる東京ドームの応援席には多くの人が駆け付け、2016年には強豪のパナソニック(大阪府門真市)を破り大会初白星を挙げた。
しかし活動の基盤となる銀行の経営は苦しく、野球部は22年度をもって活動を無期限休止に。銀行側は「業務に注力するための苦渋の決断」と説明したが、部員らの間には事実上の廃部との受け止めが広がった。 休部からまもなく、野球を続けたい選手の思いに応え、当時のスタッフらを中心にクラブチームが結成された。野球のつながりで地元・山形を盛り上げたいとの思いから「B―net/yamagata」と名付けた。きらやかでコーチを、B―netでは監督を務める舟田友哉さん(40)は「満員の東京ドームをもう一度見たいんです」と決意を語る。 ▽スポンサー続々 企業の後ろ盾を失ったことで、それまで会社が負担していた道具代や遠征費などを自分たちで賄わなければならなくなった。窮地に立ったチームに対し、山形県寒河江市で自動車販売店「プライムオート」を家族で営む渡辺達哉さん(41)が支援を申し出た。 渡辺さんは、きらやか時代からコーチを務める石川剛さん(42)と高校の同級生。「プロ野球チームがない山形にとって、きらやかは県を代表するチーム。再び頑張ってもらうために、何か役に立ちたかったんです」と振り返る。