社会人野球最高の舞台・東京ドーム目指す「クラブチーム」 「打倒・大企業」の情熱と組織づくりとは
支援の見返りはユニホームへの社名掲示や、チームのホームページへの掲載。こうしたスポンサーが1年間で35社まで増えた。「ユニホームに名前が載っても、実際の還元は少ないはず。それでも『応援したい』という気持ちだけで支えてもらっているので、ありがたいです」と石川さん。チームの資金繰りにも少しずつ余裕が出てきた。 ▽「山形のチーム」 活動2年目に入り、選手総勢20人ほどだったチームが30人を超えた。当初はきらやか出身の選手が中心だったが、この春に山形大を卒業した新人らも含め、きらやかに所属していなかった選手が約6割を占めるまでになった。 舟田さんは「いい意味できらやか色を徐々に薄め、『山形のチーム』として知名度を上げたい」と話す。山形には長年、社会人レベルの硬式野球チームが少なく、高校や大学を卒業後に野球を諦める人も多かった。舟田さんは「東京ドームを目指しながら、山形で野球を続けたい選手の受け皿になれれば」と先を見据える。
活動初年の23年度は公式戦9勝4敗と勝ち星が上回った。ただ、きらやか時代にしのぎを削った東北の企業チーム「TDK」(秋田県にかほ市)や「七十七銀行」(仙台市)にはいずれも完敗で、都市対抗野球大会の舞台となる東京ドームにはたどり着けなかった。 企業チームは練習そのものが仕事。一方、クラブチームは職場も一人一人異なり、平日の練習に全員がそろうのは難しい。そんなハンデも乗り越えようと、舟田さんは意欲を燃やす。「各自が自主練習に取り組み、人が集まる週末に監督の指揮で息を合わせる。そんなオーケストラみたいなチームを目指したい」と力強く言い切った。 ▽恵まれた環境 和歌山県有田市。タチウオの名産地として知られる漁師町を4月に訪れると、土砂降りの雨だった。JR箕島駅から漁船が停泊する港の横を抜けると、築30年ほどとは思えないほど整備が行き届いた球場が姿を現す。有田市を拠点に活動するクラブチーム「マツゲン箕島」の練習拠点だ。