【40代・50代「更年期治療」をアップデート!⑧】更年期の不調以外に婦人科で相談してもいいこと、出してもらえる薬とは?
市販薬を飲むより、処方薬のほうが断然頼りになります!
「更年期症状の根本治療ではないけれど、この時期は、対症療法的なお薬を飲んでもいいと思うんですよね。個人差はありますが、更年期外来の先生ならかなり幅広く診てくれるはず。 せっかく時間を割いて受診しに来てくれた、つらい人ならなおさら頑張って出向いてくれた、そして診察料を支払ってくれている…、それを考えるとできるだけのことをしてあげたい、必要な薬は出してあげたい! と思うわけです。 だから診察の最後に『ほかに気になっていることはありますか?』となるべく聞くようにしています。そう聞いてもらえたら『あ、言ってもいいんだ』となるじゃないですか。 時々頭痛薬を飲んでいるのであれば、市販のものより処方してもらった鎮痛薬のほうがきちんと効くし、薬代も安いからそのほうがいいでしょう? 気持ち悪いとか吐き気がするなんていう症状があれば、胃腸薬もありです。更年期に入って便通がなかなかない人なら便秘薬もあります」 ただし「ついで処方」に慣れて、あれもこれもと言い出す人もいるそうだが、それはちょっとマナー違反。処方箋を出したあとで思い出して、「あともうひとつお願いしたくて」とか「あとひとつ」「もうひとつ」は困ると吉形先生。 「健康診断や人間ドックを私のクリニックでやっている人は、検査結果を診てあげられるので、コレステロール降下剤(脂質異常症の治療薬)などは出しちゃいますね、私の場合は。私と同じように更年期外来をやっている先生や、女性医療の専門の先生方は、生活習慣病のお薬は出してくれることが多いと思います。 ものすごくLDLコレステロールや中性脂肪の高い人なら、院内の内科を紹介します。もちろん血液検査の数値だけじゃなく動脈硬化の検査もします」
コレステロール値が高いことを、見くびらないで
「本来、40代からは誰でも1年に1回は頸動脈エコーを受けてほしいところです。動脈硬化があるかどうかを知るのに、簡易かつ有用な検査が頸動脈エコー(超音波)検査だからです。つまり、プラークがあるかないか、またその程度を診るのが重要。 更年期からは女性ホルモンの低下により、コレステロール値が上がるのはよくあることなので、婦人科や人間ドックでも、PWV(脈波伝播速度)、CAVI(心臓足首血管指数)などの検査を実施しているところはあります。ただし、これらはあくまで動脈硬化のスクリーニング検査(リスクの高い人をふるい分けるために行う検査)。頸動脈エコーの前の検査です。 40代だとすでにプラークがある人のほうが多いくらいで、喫煙者は特に多く、非喫煙者でも少なくありません。一度できたプラークを改善させるのはけっこう大変なので、小さい芽のうちに見つけること。あるいは、プラークがない人はない状態を維持できるように生活習慣に気をつけたいものです。 プラークが1.1㎜ほどの軽症ならまだ大丈夫。有酸素運動をしましょう。青魚やEPA・DHAのサプリメントをとるだけでも違います」 どちらにしても、もし「コレステロール値が高いです。再検査してくださいね」と言われた人は、見くびらずにちゃんと内科で頸動脈エコー検査してもらいに行こう。 「昔に比べると、コレステロール値は高くても大丈夫、コレステロール値が上がる食べ物も実は食べても大丈夫、卵はいくつでもOK みたいな時代になってきていますよね。でも、検査をしないでいると、40代でも『まさか私が!』となるんです。 だって、卵を何個食べても大丈夫な人もいれば、まったくそうでない人もいるんです。その個人差は、生活習慣と遺伝ですね。 例えば、家族性の高コレステロール血症と診断された人。『家族性だからコレステロール値が高くても仕方がないのよ、私』と放置してしまう人がいます。仕方がなくないんです。家族性ということは若いときから高い状態が続いているのだから、心臓病などの発症に、若いときからずっと注意しなきゃならないんです。 どうして『仕方がない』という発想になるんでしょう? 『人より気をつけなくちゃ』という発想で自分の健康を守ってほしいんです。 知識は身を助けます。検査が必要なんだというくらいはことくらいは覚えておきましょう。病気が発覚してから『あの先生、全然教えてくれなかった』なんて嘆くより、まずは自分で覚えておこう、自分で健康を守ろうよって思います」
【教えてくれたのは】 吉形玲美さん 産婦人科医、医学博士。浜松町ハマサイトクリニック特別顧問。大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社) イラスト/Shutterstock 取材・原文・画像制作/蓮見則子