韓国の尹大統領へ強まる辞任圧力 各地で退陣求める集会、弾劾は与党側の造反が焦点に
【ソウル=桜井紀雄】韓国国民の権利を制限する「非常戒厳」の宣布という強硬措置を取りながら、数時間後に解除した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領への辞任圧力が強まっている。野党側は尹氏の弾劾訴追案を提出しており、保守系与党「国民の力」の一部議員が尹政権へ〝造反〟し、賛成に回るかが目下の最大の焦点となっている。 【写真】ソウルの国会で尹錫悦大統領の弾劾訴追案を提出する議員ら 尹氏は4日未明、国会での解除要求決議の可決を受け、戒厳の解除を表明した。ただ、国家の機能を麻痺させるような「非道な行為の即刻中止」を野党側に要求。この時点では続投する意向が読み取れる。 尹氏の強硬措置を受け、4日、ソウルのほか、南東部の釜山(プサン)や南西部の光州(クァンジュ)など、各地で尹政権の退陣を求める集会が開かれた。聯合ニュースは、全国同時にこの種の集会が開かれるのは、朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)の弾劾を求める集会開催が続いた2016年以来だと伝えた。韓国記者協会などのメディア団体も4日、記者会見で尹氏の即時退陣を要求した。 今回の非常戒厳宣布の直後、国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は「宣布は間違っている。国民とともに阻む」と反対の立場を示し、国会での戒厳解除要求の決議には与党議員の一部も賛成した。韓氏は責任者として金竜顕(キム・ヨンヒョン)国防相の解任などは主張したものの、尹氏に対しては、まずは状況の詳細説明をすべきだと求めるのにとどまっている。 韓氏も尹氏と同じ検察出身で尹氏の側近として知られたが、尹氏の妻の疑惑への対応などを巡って尹氏との距離が指摘されてきた。韓氏の動向に注目が集まっている。 与党側から9人以上が弾劾訴追案に賛成に回れば、可決され、大統領の職務が停止される。憲法裁判所が180日以内に罷免するかどうかを判断する。その間、韓悳洙(ハン・ドクス)首相が大統領職務を代行することになるが、対日外交を含め、外交・安全保障政策への影響は避けられない状況だ。