交通系ICカードはもう古い? 国交省「完全キャッシュレス決済バス」実験で見えた新たな決済トレンドとは
DXでバス業界改革
2024年も年末が迫るなか、注目すべき交通関連の大規模プロジェクトが始まろうとしている。それが、国土交通省が主導する「完全キャッシュレスバス」の実証実験だ。 【画像】意外と知らない! これがキャッシュレスの「導入メリット」です! 画像で見る(16枚) このプロジェクトでは、全国の18事業者29路線が国交省により選定され、それぞれ期限付きで完全キャッシュレスの運行が行われる。主な目的は以下の2点だ。 ・地域経済のデジタルトランスフォーメーション(DX)の促進 ・バス業界の深刻な人手不足への対策 現金の両替や集計作業がドライバーに与える負担を軽減し、業務の合理化を図ることで、業界の 「担い手問題」 を解消する狙いがある。 特に注目すべきは、国交省が事業者に対して特定の決済手段を指定していない点だ。これにより、事業者は自社の状況に最適な決済方法を柔軟に選択できる。
29路線選定、計画超えの規模
国土交通省は、完全キャッシュレスバスの実証実験に参加する事業者を選定する際、以下の基準を設けていた。 ・利用者が限定的な路線(空港・大学・企業輸送路線など) ・外国人や観光客の利用が多い観光路線 ・様々な利用者がいる生活路線で、キャッシュレス決済比率が高い路線 ・自動運転など他の社会実験を同時に行う路線 当初は、これらの基準に該当する路線を10路線程度選定する予定だったが、最終的に選ばれたのは 「18事業者29路線」 となり、当初の計画を大きく上回る規模となった。また、各事業者が導入するキャッシュレス決済の 「銘柄」 について、国交省からの指定は一切なく、事業者の判断に委ねられている。このため、どのキャッシュレス決済が採用されているのかが注目される。
交通系ICカードが首位
本稿では、 ・交通系ICカード ・クレジットカードのタッチ決済 ・コード決済の導入状況 に焦点を当て、回数券やデジタルチケット、事業者独自の乗車カードなどは、あるひとつのサービスを除いて集計から外すことにする。 まず、各決済サービスの導入数を見てみよう。 ・交通系ICカード:13(43%) ・タッチ決済:10(33%) ・コード決済:5(17%) ・Quickride(デジタルチケットアプリ):2(7%) この結果から、交通系ICカードが最も多く導入されていることがわかるが、タッチ決済もその後に続いていることがわかる。 タッチ決済を導入しているが交通系ICカードは導入していない事業者は 「2社」 で、現状では交通系ICカードとタッチ決済が共存しているケースが多いようだ。 一方、コード決済を導入している事業者は5社あるが、同一事業者でも路線によってはコード決済が導入されていないケースが見られる。 例えば、名鉄バスのセントレアリムジンではQRコード決済に ・Alipay+ ・WeChat Pay のみ対応している。この空港バスは中部国際空港と名古屋市内を結ぶ路線であり、外国人旅行者を主なターゲットとしているため、特化した決済方法が採用されている。 また、横浜市交通局が運行するベイサイドブルー(横浜駅前~山下ふ頭~横浜駅改札口前を結ぶ路線)では、 ・PayPay ・楽天ペイ ・d払い ・auPAY ・メルペイ など、国内大手のコード決済サービスを利用できるようになっている。